「何度も説明しているのに、ちっとも覚えない。なんて出来ない部下だ…」などと憤慨する前に、相手がわかるように説明出来ていない自分の不甲斐なさを振り返る勇気も必要なようです。今回の無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』では、著者で現役弁護士の谷原誠さんが、ジャーナリスト・池上彰さんの「解説力」を例に上げつつ、人にものをわかりやすく教えるためのポイントと、同時に得られるメリットについて解説しています。
教えることの効用
こんにちは。
弁護士の谷原誠です。
ビジネスである程度経験を積み、スキルを身に付けると、職場で部下に指導するといった「教える」機会が増えます。
私も、職場ではもちろん、セミナーや講演で人に教えることが多くなりました。また現在、youtubeで時事ニュースを法律の視点から解説するチャンネルも制作しています。本やメルマガを書くことも、私の働き方、考え方等を人に教えるという部分があるかしれません。
ものを教えるということは、自分の頭の中にあることを整理し、人が理解できる形でアウトプットする作業。論理的かつわかりやすく、と常に心がけていますが、これが結構難しいものです。
そして、これは教える人の多くの方が感じることだと思いますが、誰かに教えると、自分自身の理解が格段に深まっていることを感じることがあります。他人に教えるためには、内容について深く理解しないといけませんし、教えたことのある知識は、一人で学んだ知識よりも記憶に定着し、また応用も効くようになっているのです。
ジャーナリストの池上彰さんは、政治や経済等、社会事象を何でもわかりやすく解説するエキスパートですが、彼のスキルの土台となったのは、NHKで記者として取材した経験もさることながら、司会を務めた『週刊こどもニュース』という番組で、子どもと共演した経験が大きかったそうです。
塾講師や家庭教師などの経験がある人は知っていると思いますが、一般知識やものの考え方などの前提がだいたい一致している大人と異なり、子どもの質問はどこから出るかわかりません。子どもの質問に答えるには、用語を言い換えたり、たとえ話を使ったり、より工夫した説明が必要。そういった、理解させようとする過程で、知識が深まっていきます。
私が経験した司法試験の勉強でも、参考書等を読むだけではなく、数人でゼミを組み、自分の考えを発表したり、議論したりといった勉強法がよく行われています。発表することで、勉強した記憶が定着、論文試験等で役立つ論理性が身に付くほか、間違って覚えてしまったことも発見でき、学習効果は高くなります。
何かを学習する上で、絶大な効果を持つ「教える」行為。効率よい学習のため、この効能を利用しない手はありません。