連日、各メディアで大々的に報じられている、計画当初は「安倍晋三記念小学校」として寄付金を集めていたとされる「瑞穂の國記念小學院」(森友学園)への破格値による国有地払い下げ問題。その価格は、相場のたった10%ほどというから驚きです。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんは、この学校の名誉校長が安倍総理夫人であることを指摘した上で、今回の払い下げ劇について「国民の知らぬうちに国のカネや財産が食いつぶされる」と批判。さらに当校の教育方針を上げつつ、「戦前回帰的な道徳の押しつけは危険」と警鐘を鳴らしています。
愛国教育の新設小学校へ破格値で国有地払い下げ
奇妙な話があるものだ。国有地の値段はかくもいい加減なものか。
「日本で初めてで唯一の神道の小学校」をうたい文句に今年4月、大阪・豊中市に開校する「瑞穂の國記念小學院」。
国土交通省大阪航空局が管理していた未利用の国有地を購入して建てたのだが、その土地価格が相場の十分の一ていどという破格の好条件なのである。
しかもその売却価格について、財務省は非公表としていたのに、なぜか1月10日になって1億3,400万円であることを明らかにしたのだ。
●学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か(朝日新聞)
この小学校は、学校法人「森友学園」が豊中市野田町の約8,770平方メートル(2,658坪)の国有地を昨年6月に購入し、建設工事を進めてきた。
「森友学園」といってもピンとこないだろう。だが、教育勅語の朗唱で知られる「塚本幼稚園」の経営母体といえば、思い当たる人がいるかもしれない。
ユーチューブで「塚本幼稚園」を検索すると、大阪護国神社における「同期の桜を歌う会」で、五箇条の御誓文、教育勅語を暗誦し、「日の丸行進曲」、「愛国行進曲」、「日本」の三曲を合唱する園児たちの動画を見ることができる。
さて、問題の土地についてである。近畿財務局は14~16年度に公共随意契約で36件の国有地を売却しているが、この学校用地1件だけは非公表としてきた。
4月に開校が迫る私立の新設小学校の用地を国はいったいいくらで売ったのか、誰しも気になるところだ。東隣の国有地9,492平方メートル(2,876坪)を豊中市は2010年3月に約14億2,300万円で購入している。
豊中市の木村真市議は昨年秋に情報公開を請求したが拒否された。国有地の売却結果は原則として公表しなければならないにもかかわらずである。
朝日新聞などの取材に対し、財務局は「学園側から非公表を強く申し入れられた。公表によって学校運営に悪影響が出るおそれがある」と説明したという。
公表すればどんな不都合なことが起こるというのだろう。背景に何があるのか。木村市議は非開示の決定を違法だとして、今年2月8日、国に決定の取り消しを求める訴えを大阪地裁に起こした。
すると、その二日後の2月10日、財務局はあっさり決定を覆した。「売却額は1億3,400万円」と明らかにしたのだ。
●国有地売却額、一転公表 「ごみ処理費8億円控除」(朝日新聞)
これで、非開示だった謎が解けた。路線価に基づく国有財産台帳の価格は2012年時点で8億7,472万円、13年時点で7億6,302万円である。森友学園への売却額との差額はあまりにも大きい。朝日新聞は、売却額算定に関する財務局の説明についてこう書いている。
財務局から依頼された不動産鑑定士が更地価格を9億5,600万円と算出。財務局は地下の廃材、生活ごみの撤去・処理費8億1,900万円と撤去で事業が長期化する損失を差し引いた1億3,400万円で、同年6月に公共随意契約で同学園へ売ったという。
他の買い手に対する財務局の姿勢は全く異なっていた。
11年にこの国有地の取得希望を国に伝えていた別の学校法人は朝日新聞の取材に対し…国交省から「大量の埋設物がある」と知らされ…撤去費をふまえ、7億~8億円だった購入希望額を約5億8,000万円に下げたが財務局から低いと指摘され、断念したという。
他の法人が約2億円の撤去費を見込んで5億8,000万円を提示しても国はOKしなかったのに、森友学園に対しては、埋設物やゴミの撤去費の見積もりを8億という法外な額にすることで、国有地をほとんど叩き売ったようなかっこうになった。
財務局は、その理由について「土地の個別事情を踏まえた。その事情が何かは答えられない」と口をつぐんでいるようだ。
国民の財産を民間に売り渡すのに「事情があるが、その中身は言えない」というのでは、よほど後ろめたいことでもあるのかと勘ぐられても仕方がないだろう。