2月10日に迫った安倍総理とトランプ新大統領との会談。それに先立つ形でトランプ氏は日本を「為替管理国」と名指しで批判するも、安倍首相や黒田日銀総裁は真っ向から否定しました。しかしメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではこれを「嘘」とし、昨年末に菅官房長官が新聞紙上で語った「動かぬ証拠」を提示。さらにトランプ氏と官邸との間に共通の価値観などなく、10日の首脳会談で安倍政権が目指す「米国との価値観の共有」などは土台無理なのでは、という認識を記しています。
遺憾ながら、日本は「為替管理国」なのである──安倍首相はトランプと何を共有できるのだろうか?
トランプ米大統領は1月31日の米製薬業界幹部との会合で、「他国は通貨安誘導に依存している。中国がやっていることを見てみろ。日本が何年もやってきたことを見てみろ。彼らは金融市場を利用している。それに対して米国は何もせず、バカ丸出しで座っている」と述べた。
翌1日の衆院予算委員会で、このトランプの対日批判について問われた安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁は、「物価安定のための適切な金融政策を進めているのであって、円安誘導という批判には当たらない」と強調したが、これは嘘で、まことに遺憾ながら、アベノミクスの最大の柱は実は官邸主導による為替相場管理政策である。
菅官房長官の円安誘導宣言
日本経済新聞16年12月27日付に載った菅義偉官房長官へのインタビューが「動かぬ証拠」で、安倍首相はこの件に関しトランプに何を言われても申し開きは立たないだろう。この記事は「展望2017」と題したシリーズの第3回で、タイトルは「為替、危機管理怠らず/内閣官房長官 菅義偉氏」である。
──経済・金融政策で力を入れるものは。
「日本企業が見通しを立てられるような環境にすることがものすごく大事だ。私の重要な危機管理の1つに為替がある。財務省、金融庁、日銀による3者会合を開かせている。日本企業が間違いなく国内で経済活動できるような環境をつくる」
「為替に関しては(トランプ相場で)黙って(円安に)なったと言われるが、私たちが為替の危機管理をちゃんとやっているからだ。今まで日本は翻弄されてきた」
──具体的にどんな対応がとれますか。
「そこは色々と。私たちの為替への意識は強く、中途半端な決断ではない」
「私たちの」とは「安倍政権の」ことである。「為替への意識」とは「円安誘導への意識」のことで、「中途半端」ではない決断、覚悟を背景に「私」すなわち官房長官が直接責任を持つ「重要な危機管理」の一環として「財務省、金融庁、日銀による3者会合を開かせて」「ちゃんとやっている」のである。
これは公然たる政府による為替管理宣言である。