コンビニエンスストア業界といえばセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンが他を大きく引き離して「3強」状態となっていますが、北陸のとある県に王者・セブンイレブンを上回る客単価を実現している究極の地域密着型コンビニが存在していました。その店の名は、福井県内のみで店舗展開する「オレボステーション」。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では、驚くべき人気を支える同社の戦略・戦術を分析しています。
大手がやれないこと
セブンイレブンを上回る客単価を実現しているコンビニを分析します。
● オレボステーション(コンビニエンスストア)
戦略ショートストーリー
福井市にお住まいの方をターゲットに「徹底的に地域密着の文化」に支えられた「オリジナル弁当を作れる」「顧客の要望に応えてくれる」といった強みで差別化しています。
大手コンビニチェーンにはない「惣菜バイキング」や「食堂」、「特徴的なポイントカード」など、地域のコンビニ利用客が求めていることに応えることで支持を得ています。
■分析のポイント
大手がやれないこと
コンビニ業界は、3強のシェアが拡大し、寡占化が進んでいて中小のコンビニチェーンは苦戦しているようです。3強といっても、ファミリーマート、ローソンはセブンイレブンと比較して平均日販(一店舗当たりの一日の売上)で10万円以上の開きがある状況ですから、王者セブンイレブンをファミリーマート、ローソンが追いかけるという構図は、変わりそうにありません。
追いかけるファミリーマートとローソンは、セブンイレブンに追いつくために、様々な打ち手を打っていて、今年は、ファミリーマートはサークルKサンクスと統合し、ローソンは三菱商事の子会社になるなど大きく動いています。
ですが、同じような店舗フォーマット(商品構成)のままでは、ファミリーマートやローソンが、その差を埋めることは難しいでしょう。これは、いままでのファミリーマートとローソンがそのことを証明しているともいえますが、セブンイレブンと同じような商品構成の店舗ではセブンイレブンに並ぶことは非常に困難であるということです。
それほど、セブンイレブンの強さが際立っているということでもあります。つまり、セブンイレブンが確立したコンビニのフォーマット(商品構成)にこだわっていては、まず勝ち目がないということです。
そのようなコンビニ業界において、王者セブンイレブンとも戦える企業があるということは戦略を学ぶうえでも、参考になります。例えば、本メルマガVol.8で分析した「セイコーマート」は「道民の道民による道民のためのお店」を展開し北海道では、セブンイレブンの店舗数を上回っています。
そして、「オレボステーション」は、なんと、セブンイレブンと同水準の日販を実現しているのです。大手のファミリーマートやローソンが、セブンイレブンに追いつこうとしても、なかなか実現が遠い状況なわけですから、「オレボステーション」はすごいことを実現しているといえるでしょう。
「オレボステーション」とコンビニ3強との大きな違いの一つはフォーマット(商品構成)です。具体的には全体売上げの6割以上を店内調理の食品が占めているということが示していますが、手作りの惣菜の品揃えに注力しています。3強は店内調理でない弁当や調理パンを含めても全体売上げの2~3割程度ですから、大きな違いといえるでしょう。また、店内調理を充実させるということは、手間が増えるということでもありますので、効率化を重視する傾向にある大手は真似しにくいでしょう。
非常にシンプルですが、セブンイレブンと同じようなフォーマットで勝ち目がないのであれば、「オレボステーション」が示してるように、セブンイレブンと異なるフォーマット、新しいフォーマット(ダイニングコンビニ=新しい価値)で勝負すれば、勝機(生きる道)はあるということです。
今後もオレボステーションの動向に注目していきたいです。