8月上旬、尖閣諸島近海に中国船団が大挙して押し寄せた「事件」に関して、先日、日経新聞紙上にある記事が掲載されました。メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』の中で高野さんはこの記事を取り上げ、ことさら中国の脅威を煽る日経の巧妙な「文脈の組み立て」を徹底検証し、「デマ記事」と厳しく結論づけるとともに、東シナ海・黄海を巡る「本当の問題」とその解決策について論を展開しています。
「中国脅威論」はどのようにデッチ上げられるのか? ──日経新聞の手法を徹底検証する
日本経済新聞が連載した「習近平の支配」シリーズは、10月22日付の「闘争再び」第5回で以下のように書いている。注意深く読んで頂きたいのは、この文脈の組み立てである。(1)以下、番号を振った部分は要約ではなく全文引用である。
- 8月上旬、200隻を超す中国漁船が沖縄県・尖閣諸島近海に押し寄せた。
- 漁船には軍が指揮する「海上民兵」がいたとされ、一部は中国公船と日本の領海に侵入した。
- 福建省泉州を母港とする漁船の船長、周敏(44)も日中衝突の危険漂う現場にいた1人だ。
- 「たくさん魚が捕れるからだ」。尖閣近海に出向いた理由を無愛想に語る周の船にも、軍事につながる仕掛けがある。中国が独自開発した人工衛星測位システム「北斗」の端末だ。
- 衛星からの位置情報はミサイルの誘導など現代戦を左右する。「有事」のカギを握る技術だけに、米国の全地球測位システム(GPS)には頼れない。中国は2012年北斗をアジア太平洋地域で稼働させた。
- 周が「昨年、載せろと命令された」という北斗端末は、すでに4万隻の中国漁船に装備された。友好国パキスタンなど30カ国以上が使い始め、20年に衛星35基で世界全体を覆うという。
(中略) - 宇宙、空、海。超大国・米国と張り合うように、中国は独自の秩序を押し広げている。習は「中華民族の偉大な復興」を「夢」に掲げ「2つの100年」を実現への節目としている。共産党創立から100年の21年と、中国建国から100年の49年だ。
(中略) - 習が支配する中国は国際的な司法判断さえ「紙くず」と言い放つ。大国の威信を取り戻す夢は自己増殖し、世界のルールからはみ出しつつある……。