かつて、「社会保険庁が私たちの積み立てた年金をムダ遣いした」というニュースが広くメディアで報じられました。しかし、これについて、メルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』の著者で中部大学の武田教授は、「年金崩壊」という表沙汰になってはいけない事実を隠すために、政府とメディアがグルになって報じているだけだと断言。果たして、私たちの年金は今後どうなってしまうのでしょうか?
先進国で唯一「賃金」が大幅下降している日本。年金崩壊を止めるには?
多くの若い人が貯金をしていますが、その主な理由が「将来への不安」で、職を失うのではないか、年金がもらえなくなるのではないかという不安が感じられます。二つとも、日本社会の安定性や政治が誠実さを失った証拠とも言えます。
さらに、自民党の再生大臣が「消費税を近い将来15%にしなければならない」と発言し、先進国の中で日本が唯一「賃金」が20%も下降しているという状態です(主要な先進国は同じ期間〈25年間〉で1.5倍になっている)。これでは将来を不安に感じる若者が多いのも仕方がありません。
将来が不安だから貯金をして消費を減らす、それに追い打ちをかけるように、「節約」や「資源の枯渇」が叫ばれるということですから、景気も良くならず、雇用も下がるという悪循環に陥っています。
でも、年金だけは崩壊しないようにすることができます。
現在の年金は、戦前の家制度が崩れて、子供が親を見ることがなくなったので、その代わりにできたものです。子供が親を見るときには、その年の子供の稼ぎで家族と親を養うので、「その年、その年」に収入と支出をバランスさせます。
家制度をそのまま年金制度にすると、いわゆる「賦課型」という方式になり、ある年に勤労者から高齢者の年金分を税金のようにとって、それを高齢者に年金として分配するということになります。でも、自分の親だからお金を出すこともできますが、見ず知らずの高齢者に自分が苦労して仕事をした賃金を出すのには抵抗がありました。
そこで、1961年にできた現在の年金は「積立型」が基本になっています。
つまり、自分で若いうちから年金を積み立て、半分は勤め先の企業が出し、それを社会保険庁(現在の年金機構)が預かって運用し、その人が高齢者になった時に、年金として支給するというものです。
ちょっと聞くと、素晴らしい制度で、それに加えて当時の政府は「揺り籠から墓場まで」というバラ色の社会保障制度を宣伝しました。なにしろ国民全部から年金の積み立てということで新しくお金を徴収するのですから、それは難しいことだったのです。
国家というのは大勢の人を対象とするので、新しい制度を作るときには若干の「ウソ」を入れないと、国民の納得が得られないのです。制度を作った厚生省(当時)は、この積立型年金が必ず破綻することを知っていました。理由の第一は「インフレによる価値の低下」で、100万円積み立てたらほぼ半分の50万円が残れば良い方という試算をしていました。また第二に「お金が社会保険庁にあるとそれを狙う政治家がいる」ということで、政策的に使用されるのでお金が消えていく可能性が高かったのです。