中央卸売市場長の更迭人事が伝えられるなど、混乱が続く豊洲市場問題。解決に向け専門家会議を再び招集した小池知事ですが、メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんは、その知事の姿勢について「本気度を疑う」としその論拠を記すとともに、そもそもこの土地に市場をつくるのは極めて危険と断言しています。
役人の追認機関に豊洲地下空間の安全評価をさせてどうする
豊洲市場の建物地下に盛土がなく空洞だったことを東京都がひた隠しにしてきたのは、日本の役所の隠ぺい、ウソつき体質を象徴する問題であるに違いない。
だが、この間のメディアの報道によって、盛土なら安全だと勘違いする傾向も強まっているのではないだろうか。
盛土など土壌汚染対策の原案をつくったのは都庁の役人だ。それに、お墨付きを与えた「専門家会議」には、かつて多くの疑念の声が上がっていた。
忘れてはならないのは、どんな対策をほどこそうと、東京ガスの工場跡地に食料品の市場をつくるのは極めて危険ということだ。
にもかかわらず、計画を決めた当時の都知事、石原慎太郎は「日本の土木工学をもってすれば豊洲の地下に何があろうと、汚染物質は除去できる」とうそぶき、反対の声を無視して、強行突破したのである。
そのさい反対論の広がりを食い止めるため頼りになったのが、「専門家会議」であり、その座長、平田健正・和歌山大工学部教授(当時)だった。
元通産省地質調査所主任研究官、坂巻幸雄は「豊洲埋立地の土壌汚染と地質特性」(2009年7月)という論文のなかで、平田教授について、「行政の立場に理解が行き届く研究者としての名声が特に高い」と皮肉まじりに評している。典型的な御用学者ということだろう。
コントロールしやすい学者を有識者会議のトップに据えられるかどうかが、事務局をあずかる役人の腕のみせどころである。自分たちの政策なり計画に、学問的な権威によって客観性、公正性を与えてくれる存在として役人たちは有識者会議を利用している。
事務局が原案をつくり、会合で先生たちの意見を聞いて若干の修正を加えながら、役所の基本方針に都合のいいところに着地させる。それが常套的な行政手法だ。
坂巻は同じ論文で、専門家会議の安全評価について「危険サイドに評価すべき問題点を、あえて安全側に読み替えようとした意図が、あちこちに散見される」と批判している。