政府は先日、東シナ海の日中中間線付近に中国が建設した16基ものガス田開発施設の写真を公表しました。南シナ海しかり、なぜ中国は強引に海洋進出を画策するのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の中で、中国が置かれている危機的状況に起因すると分析しています。
なぜ中国は東シナ海ガス田開発を続けるのか
●政府、中国ガス田写真を公開=中間線付近に構造物16基─菅官房長官、中止要求
東シナ海での日中中間線近くで、中国がガス田開発のために16基の構造物を建設していることについて、日本政府は中国が一方的に資源開発していると批判し、中止を要求しました。
このガス田開発については、2008年8月に日中共同開発が合意され、当時は2箇所だった白樺(中国名・春暁)と翌檜(中国名・龍井)の掘削施設について、日本側が資本参加して詳細が決まるまでは中国は開発を中断することで合意していました。
ところが中国はいくら日本が計画の詳細を詰めるための交渉を持ちかけても応じず、それどころか秘密裏に掘削施設の建設を進めていたのでした。そして現在では16基にも増えてしまったわけです。
日本の批判に対して中国は、「中国の活動は争いのない中国の管轄海域で行われている」「日本のやり方は対立をつくる意図がある」などと応酬していますが、約束を守らなかったのは中国側の方ですから、この言い訳は通用しません。
[参照]中国「対立つくる意図」と非難=ガス田開発は「主権の範囲内」
この東シナ海のガス田は、日中双方の海域に広がっているわけですが、どちらかが一方的に掘削施設をつくってしまえば、そこから双方の海域にあるすべてのガスを吸い取ってしまえるわけで、だからこそ共同開発で合意して、一方的な開発をしないと約束したのです。
ただし、ガスの埋蔵量は開発投資を回収できるほどではなく、赤字になるといわれてきました。つまり、資源開発は建前であり、中国にとっては海洋覇権を握るための橋頭堡として、施設建設を進めているということです。もちろん日本も、それを阻止するために「共同開発」を主張したわけです。
さらにいえば、本メルマガでもこれまで述べてきたように、中国は最近、南シナ海支配を推し進めていますが、これに対する批判をかわすために、東シナ海での活動を活発化させている側面もあります。中国にとっての戦略的な重要性からすると、東シナ海より南シナ海のほうが高いからです。
中国は、陸の拡張は西南ではインド、西はイスラム世界、北はロシアに阻止されているため、海への進出しか残っていません。そのため「海に出なければ中国人の21世紀はない」と主張しながら、月まで「中国の絶対不可分の固有領土」「月の資源開発」などと放言しています。ネットを通じて観測気球を打ち上げ、世界の反応を測ってから政府が主張をするというのが従来の中国型主張です。
加えて、中国国内の経済状況の悪化が挙げられるでしょう。6月中旬から7月上旬にかけての中国株式の大暴落で、自殺者が続出しているとも報じられています。中国株式の8割以上が個人投資家ですから、それもありうる話です。
[参照]自殺者…9000万人が損失「上海株暴落」で中国は暴動前夜
こうした民衆の不満を他へ逸らすために、わざと日本側を挑発して、日本の反発に対して反日気運を煽る、といった意図もあると思われます。