巷で話題の映画「君の名は。」ですが、感想以外に自分なりの“分析”を書き込んでいる人も少なくありません。無料メルマガ『あとがきのあとがき 心理学者/中西康介』の著者で、数多くのカウンセリングを手掛けてきた心理学者の中西康介さんも、軽い気持ちで観に行ったこの映画に衝撃を受けた一人です。さて、心理学のプロである中西さんは「君の名は。」にどのような感想を抱いたのでしょうか?
『君の名は。』論
周りの人に強く勧められて「君の名は。」を観てきました。
保育園の年長ぐらいの子どもから50~60代ぐらいの方まで幅広い年代の人が2回3回と観に行っているという話を聞き、先日自分も観に行ってきました。
元々、アニメ映画自体あまり好きではなくここ数年は専らヤクザ映画を中心にマークしてきた自分としてはあまり多くを期待をしていませんでした。
感想を端的に言えば
「特別泣けるような感動モノではない。だけどなぜか、何度も思い出し、考えてしまう」
そんな不思議な余韻が続く映画でした。
それもそのはず。
この映画のジャンルがオフィシャルにどう位置づけられているか分からないのですが、これは「シンボリック・エロス」というかつてないジャンルを開拓したからです。
いや過去に「シンボリック・エロス」にカテゴライズされる作品も存在したかもしれません。
しかしこの作品が他を凌駕するのは観ている人にさえ「シンボリック・エロス」というジャンルであることを気付かせない点ではないだろうか。
試しに「君の名は。」を観たという人に「それってどんなジャンルの作品?」と聞いてみるといい。
「恋愛もの?」
「青春エンターテイメント?」
「せつない系?」
どれも的を得ているようで核心を貫いた括りとは言い難い。
なぜか。
何度でも繰り返すしますが、観ている人にすら察知されないよう象徴的なエロスを追求しているからだ。