「本を開かずに中身を読むことができたら」ー。そんな好奇心を追求し、MITの科学者がその発明に成功しました。そこには最近注目されている「テラヘルツ波」を用いた最新技術が使われているとのことです。
触らずに本の中身を読み取る? 「古書」などに実用的な発明
ニューヨーク・ポストによると、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者Barmak Heshmat氏は、テラヘルツ波を用いて本の最初から9ページまでの内容を読み取ることに成功したと報じています。
「テラヘルツ波」を本に投射すると、ページとページの間にあるエアギャップ(空気の隙間)によってページを見分けることができるそうです。
これによりインクを検知し、ページ単位でそこにある文字を識別できるということです。
Heshmat氏はすでに10年前の研究から発想を得たと言います。
それはテラヘルツ波を使って、力を加えずに封筒の中身を探ることができるというものでした。
封筒の中の透視から、複層に重なった紙上のインクとその文字を識別するというところまで進化させたということになります。
この技術を応用すれば、研究者が表紙を開けるのもためらうほどもろい書物などの文献の解読に使えるとのこと。
「例えばニューヨークのメトロポリタン美術館には触りたくても触れないような数多くの本がありますから、彼らはとても興味を示してくれています」(Heshmat氏)
「私はとても好奇心が強い人間です。本を閉じたままで実際にその中身を読み進めていくという、誰もやったことがないことをやりたかった。最初の9ページよりもっと先を読むための技術を進化させなければなりません。いつの日か『本をハッキングする』ことができるようになるはずです」とも話しています。
この「テラヘルツ波」とは何なのか?
ところで、この研究に用いられている「テラヘルツ波」とは一体何なのでしょうか。
これは赤外線(光)と電波の間に位置づけられている電磁波で、この帯域は電波と光波の中間に位置しています。
テラヘ ルツ波は、電波のように紙、プラスチック、ビニ ール、繊維、半導体、脂肪、粉体、氷など様々な 物質を透過できるとともに、光波のようにレンズ やミラーで空間を自由に取り回すことができるという特徴があるそうです。
X線、赤外線、マイクロ波などの他の周波数帯に比べて研究が遅れていたため「未開拓の電磁波」と呼ばれています。
テラヘルツ波を使った研究は日本でも盛んに行われています。
この帯域の電磁波発生・検出装置が急速に進展してきたため、テラヘルツ波の特性を活かした“テラヘルツイメージング”という、産業への応用研究も活発になっているようです。
ちなみに、日本テラヘルツ波による透視イメージングの研究事例には、封筒の中の麻薬検査や、筆圧痕の科学捜査などがあるようです。
テラヘルツ波はX線と違い人体にもやさしいということもあり、これから様々な研究に応用できそうな電磁波ですね。
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Source by: ニューヨーク・ポスト, MITニュース, テラヘルツイメージング, ネイチャー
文/桜井彩香