アメリカ首脳はドル高を望んでいない、よって年内の利上げはない―そう思い込んでいた市場の読みが、FRBイエレン議長の8月26日の発言でまさにひっくり返った、とするのはメルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さん。実際発言後すぐに円は急落、今後は1ドル=105円程度まで進む可能性もあるとしています。なぜこの時期にFRBは利上げを? 津田さんが読み解きます。
米利上げで世界はどうなるか?
8月26日イエレン議長はジャクソンホールでの講演会で、年内利上げの方向を示唆した。その後、フィッシャー副議長は9月の利上げで、年内もう1回の利上げを志向するというから、年内利上げを見込んでいない市場は、びっくりした。今後の経済状況を検討する。
状況の大きな変化
イエレン議長のジャクソンホールでの講演と、フィッシャー副議長の示唆は、今までの状況をひっくり返すことになった。米国のFRBは、そう簡単には利上げができず、米国首脳もドル高を望んでいないので、90円程度までドル安円高になると市場は思っていたし、為替が、どこまで円高になるかを日本の皆が心配していた。
このような状態をイエレン議長の講演は、ひっくり返したことになる。フィッシャー副議長の示唆後、円は1ドル=102円まで急落した。今後、市場が折込むと円安は1ドル=105円程度まで行く可能性がある。
それに伴って、NYSEの株価は下落し、月曜日の東証は株価を上げるはずである。FRBの利上げによって、日銀の金融政策正常化として、マイナス金利を止めることが可能になる。円安にするために、マイナス金利を導入したが、結果は国債消化を不安定にして、長期金利の急激な上昇を引き起こす可能性が出てきたから、止める必要があった。
なぜ、この時期にFRBは利上げをするのであろうか? 1つには、世界が密接に経済で結びつき、経済の相互依存性が増している。中国経済の動向がおかしくなっているのに、加えて日本経済が崩れると、米国にも大きな影響がでてくる。このため、通貨マフィアたちが通貨調整をしているように思う。
今まで、いくら円高であっても為替介入を日本単独ではできないのである。通貨マフィアの了解が必要である。もし、やっても、為替市場は膨大であり、効果がなく批判を浴び、かつ介入に対し世界のヘッジファンドが大量の空売りで対応すると、いくら日銀でも屈服してしまうことになる。ソロス対英国中央銀行の戦いで証明してしまっている。
もう1つが、リチャード・クーさんの講演でも指摘されているように、インフレが起きた途端、国債の金利急上昇が起きるし、バブルが起きる可能性があるし、景気が少し回復したら早めに金利を上げて、このようなことを防ぐことであると言っていたし、クーさんはイエレン議長やフィッシャー副議長とも連絡を取っていると言っていた。
バーナンキ前議長が訪日したのも、日本に40年国債発行をアドバイスするとともに、通貨マフィアにもバーナンキさんが話をつけてくれる方向になったと見ている。