米中関係を「同盟レベル」に引き上げたニクソン・キッシンジャーの譲歩
1960~70年代、アメリカは、ソ連におされ気味でした。第2次大戦で「世界唯一の超大国」になったアメリカ。しかし、朝鮮戦争では、中ソ北連合に勝てず、「ひきわけ」。ベトナム戦争では、無残に敗北。いっぽう、ソ連は、ますます強大化していった。強いソ連に対抗するため、ニクソン大統領とキッシンジャー大統領補佐官(後に国務長官)は、「中国を味方につける」と固く決意します。
米中は、「朝鮮戦争」でも「ベトナム戦争」でも戦ったため、大変仲が悪かった。ニクソン、キッシンジャーは、中国を味方につけるために、「ありえない譲歩」をしました。その内容(上海コミニュケ)は、
- 中華人民共和国を唯一正当の政府として認め台湾の地位は未定であることは今後表明しない
- 台湾独立を支持しない
- 日本が台湾へ進出することがないようにする
- 台湾問題を平和的に解決して台湾の大陸への武力奪還を支持しない
- 中華人民共和国との関係正常化を求める
つまり、アメリカが戦前、戦中、戦後支持・支援しつづけてきた、蒋介石、そして中華民国(=台湾)をバッサリ切り捨てた。この決定、台湾、そして日本にとっては大問題でした。そして、中国が強大になるにつれ、「正しかったのか?」と疑問が出るようになるでしょう。
しかし、事実として、これでアメリカは、「大きな二つの脅威(中ソ)の一国を味方につけることに成功した」のです(もちろん、最大の勝者は、中国だったわけですが…)。
私は、何がいいたいのか? 中国のような強大な敵に勝とうと思えば、「大きな譲歩も覚悟せよ」ということです。実際、米英は、ナチスドイツに勝つために、最大の仮想敵ソ連と組みました。米英はその後、ソ連に対抗するために、かつての敵・日本、ドイツと組みました。それでも足りないので、中国とも和解した。これがこの世の現実です。
「無料で4島返してください! さらに中国の味方はやめてください!」
そんな都合のよい話は、マンガの中にしか存在しないのです。いつも書いていますが、今は1930年代並に変化が激しい時代です。しかし、冷静に考えて、日本の深刻な脅威は中国一国だけ。そして、私たちは中国の戦略を既に知っている。
安倍総理は、「4島返還を実現し、歴史に名を残す」といった、実現困難な欲望は捨て、「米ロを味方につけ、日中戦争を回避した」ことで歴史に名を残してほしいと思います。
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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