尖閣諸島に大挙して押し寄せる中国船のニュースがメディアを騒がせています。習近平政権の狙いはどこにあるのでしょうか。そしてこの状態がそのままエスカレートした先に待つ事態とは? 無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、このまま行けば日中戦争は避けられないとし、開戦を回避するために安倍総理が取るべき政策について記しています。
日中戦争の可能性、さらに高まる(中国船の大群が尖閣周辺に出現)
私が「アメリカは没落する」と本の中で断言したのは、今から11年前のことです。05年に出版された『ボロボロになった覇権国家』。当時、RPE読者さん以外の皆さんは、「そんなアホな!」という反応。ほぼ100%の人が、「アメリカの覇権は永遠である!」と信じていた。
ところが、出版からわずか3年後、アメリカ発「100年に1度の大不況」が起こり、アメリカ一極世界が崩壊した。それで、「どうしてわかったのですか?」という問い合わせが殺到しました。
「日本は中国と戦争になる可能性がある。両国の対立は尖閣からはじまる」
こうはっきり書いたのは、08年9月、「リーマンショック直前」に出版された『隷属国家日本の岐路』です。副題は、「今度は中国の天領になるのか」。今となっては、「日中関係が悪化して尖閣から問題が起こるなんて、誰でも知ってるよね」と思うでしょう? しかし、当時その可能性を指摘していた人は、ほぼ皆無。「北野さん、今の時代に中国が尖閣を侵略するなんて非現実的ですよ!」と、RPE読者さん以外の人は、本気にしてくれませんでした。
ところが、10年に「尖閣中国漁船衝突事件」が起こり、日中関係が悪化した。12年9月、日本政府が「尖閣国有化」すると、日中関係は「戦後最悪」になってしまいます。12年11月、中国はモスクワで「反日統一共同戦線戦略」を提案。
その骨子は、
- 中国、韓国、ロシアで「反日統一共同戦線」をつくるべし!
- 中国、韓国、ロシアで、日本の領土要求を断念させるべし!
●日本には、尖閣だけでなく、【沖縄】の領有権もない!!! - 「反日統一共同戦線」には、【アメリカ】も参加させるべし!
私はこの戦略のことを知り、「嗚呼、日中戦争がはじまった!」と嘆き悲しみました。
私たち(国際関係の研究者)は、戦争を、武器を使ってドンパチやる「実戦」「戦闘」だけに限定していません。その前段階として、「情報戦」と「経済戦」がある(この二つは、実戦中も継続して行われます)。
中国が「反日統一共同戦線戦略」を提案したということは、「日本との戦争にこうやって勝ちますよ」ということでしょう? 「戦略」というのは、「戦争に勝つ方法」という意味なのですから。しかし、「実戦」の前段階に、いろいろある。日本は、「戦争がはじまったこと」すら知りませんから、まさに「サンドバック状態」です。