そこで、私は、犯行が起きているとされる部屋の全体の写真を撮ってもらった。
室内の様子がわかれば、ステルス型のカメラを自作するのも、さほど手間にならない。
結果として、仕掛けたのは、電球型のカメラと、室内の丸形蛍光灯のある照明器具から電源を確保した小型カメラ、三又コンセントを改良したwifi通信型のカメラである。
大々的な体勢での調査であったが、調査はわずか1日で完了した。すぐに決定的な証拠が取れてしまったのだ。
カメラに映っていた光景は酷いものであった。
まず、早朝、母はその日の食事などを一気に作ってしまう。そして、トラックのルート便の運転手として仕事に出掛けてしまう。姉は、部活の練習などで、同様に朝早くに出掛けてしまう。
A君はそれを見送り、朝食を食べてから後片付けや洗濯などの家事をする。その間、テレビを見たり本を読んだりしている。
午前10時少し前に呼び鈴がなり、クラスメイト3人が家に上がってくる。すぐにA君の部屋に消えるが、10分もしないうちにその中の少年2人がリビングを物色し始める。札のお金がないと悟ったのか、しばらくすると、玄関近くに置いてあった陶器製の貯金箱から器用に500円玉や100円玉を抜き出した。
その様子に気がつき、A君が止めに入るが、床に押さえつけられ部屋の隅にあった座布団を数枚、A君の腹に乗せると、1人の少年がその上で跳ねた。A君の嗚咽が響くが、お腹を押さえてうずくまるA君をリビングに放置して、彼らは姉の部屋に入った。
そこで、下着の入っているクローゼットを開くと下着を頭にかぶったり、股間に押し付けるなどいたずら行為を繰り返した。
しばらくしてA君が止めに入るが、下着などを部屋に放置したまま、彼らはA君をA君の部屋に無理やり連れて行った。
A君の部屋にはカメラは仕掛けていないため、中の様子は不明であるが、「ドン」という衝撃音の後「笑い声」を、カメラに付属しているマイクが拾っていた。
その後、彼らはリビングにあった来客用のお菓子や、冷蔵庫のジュースを手に取ると、何もなかったように部屋から出て行ってしまった。
外で様子を確認していた調査員は、そのあとを尾行した。
彼らは、駅近くまで自転車で行き、ショッピングセンターの上階にあるゲームセンターで遊び、翌日もA君の家に行こうと大声で話して、家に帰って行った。
A君は彼らが去ってからしばらくして部屋から出てきた。
姉の部屋で下着などを片付け、室内などに散らばったお菓子のカスなどを掃除機で掃除した後、リビングでテレビを呆然と見ていた。
この日、カメラの回収と併せて、この映像があることをA君に話し、なぜカメラを仕掛けていたのか私は説明した。
A君は完落ちの状態で、何が起きていたのかを話し始めた。