他の炭水化物食品と同様に「肥満蔓延の犯人」に仕立てられたり、「グルテンアレルギーの元凶」と恐れられたりと、これぞ欧米を代表する食べ物と思われてきた「パスタ」は、アメリカ人の食卓からその地位を失いつつあります。それを裏付けるかのように、各国でパスタの売り上げは減少傾向。北米における乾燥パスタの売り上げは、2009年から6%も減少しました。ドイツでは12%もダウン。そして国民の誰もが求めてやまないと思われているイタリアでさえ、25%も減っています。そんな中、イタリアから「パスタ」に関する最新の調査結果が発表され注目を集めています。
それでもイタリアではパスタは「悪者」ではない
調査結果は、ジャーナル「Nutritional and Diabetes」に、論文「パスタとBMI・ウエストヒップ比の関係性」として掲載され、「適量」のパスタを食べることは健康的なライフスタイルにつながるという結果が出たと、米ワシントンポスト紙が報じています。
伊Neuromed社のポッツィッリ研究所によると、「適量」のパスタはBMI(ボディマス指数)を減らし、ウエストやお尻周りをほっそりさせてくれるということがわかったとのこと。
「パスタのカロリーは“悪者”ではなく、適切に消費しさえすれば“良い”炭水化物なのです」(伊Neuromed社 社員)
同社は2万3千件以上のデータを集計した2つの調査結果からこのことを結論づけました。
1つは南イタリアにあるモリーゼ州のデータ、そしてイタリア各地に渡るデータの2種類です。
体型の計測と食生活のパターンごとに整理したのです。
これは、昔から行われている地中海式ダイエット(食事法)を用いて体重管理している中でのパスタの役割に着目した初めての研究とのことです。
「ここからわかったのは、広範囲に渡る地中海地域の人々にとって、パスタの摂り方が肥満につながるかどうかについては、方法論的にも地理的にも違いは見当たらないということです。穀物製品としてパスタは、古代から地中海地域で食べられてきました。これは地中海式食事法の伝統的な構成要素の1つでピラミッドの基礎にあたる位置づけとして捉えられているものです。我々のこの2つの異なる地中海地域の人々の比較結果によると、パスタの摂取量は”肥満状態”か”肥満気味”かの数値とは関係がないことを裏付けています」
(研究チーム)
「サイズ」と「種類」が重要
これでパスタをいくらでも食べてもいいというわけではありませんし、すべてのパスタがOKというわけではありません。
「1人前のサイズ」と「小麦の精製度合い」が重要です。
東京にも店舗がある某有名イタリアン・ファミレスを調べたところ、パスタは一皿1480Kcalもあります。
これだけで1日の脂肪許容量の3倍にもなるため、これは問題外ですね。
この他にも、アメリカンサイズで提供されているパスタなどは、ボリュームが一人前の適量以上になります。
また、パスタの中にはヘルシーとは言えないものもあります。
それは、消費期限を伸ばし舌触りを滑らかにするために精製した小麦を使っているパスタです。
これらは全粒粉の小麦に比べて重要な栄養素を取り除いてしまっています。
小麦の中で重要な部分とは、鉄、リン、プロテイン、マグネシウムを含むブラン(もみ殻)、芽、胚乳のことです。
「食物繊維」は、全粒粉の小麦を精製すると失われてしまう最大の栄養素です。
アメリカ人向けの摂取量ガイドラインでは、女性で1日25グラム、男性で38グラムの食物繊維の摂取を推奨しています。
食物繊維を多く含む食品を取ることで減量は容易になります。
ボリュームが同じであれば食物繊維の多い食品のほうがカロリーは低いというわけです。
つまり、これが適正なBMIの維持やダイエットに大切なポイントでもあります。
繊維質が多い食べ物は満腹感も伴います。
前述したNeuromed社の研究では、パスタ原料である穀物の違いについては言及していませんが、ノールウエスタン大学のLinda Van Horn教授によると、アメリカで流通しているパスタよりもイタリア国内のパスタのほうが全粒粉の割合が多いとのこと。
穀類は地中海式ダイエットにおいて食物繊維、プロテイン、栄養素の鍵となる食品です。
しかしそれは構成要素の1つに過ぎず、日常的にフルーツや野菜を摂り、それらでは補えない満腹感をパスタが与えてくれるというわけです。
精製されていなければ重要な栄養素も入っており、繊維質も含まれているので、量の割にヘルシーであること。
加えて繊維質は腸のぜん動運動を刺激し、結果として健康的なBMIを実現できるというわけです。