人工知能(AI)の発展はめざましく、先ごろ囲碁のトップ棋士が人工知能に完敗したというニュースは大きな話題になりました。そんな人工知能について、メルマガ『言葉の森 オンラインマガジン』では、「教育」の観点から言及。頭のいい大学に進学する「勉強ができる人」は今後、人工知能に取って代わられてしまうと主張しています。さらに、人工知能よりも人間の方が優れている能力とは何か?その能力を伸ばす教育の仕方を教えています。
人工知能に負けない学力を育てる
昔の人工知能は、「強い人工知能」として作られていました。それは、「こういうことがあったら、ああいうことをする」という入力と出力のプログラムを人間がしっかり作り込むような人工知能だったのです。しかし、それでは、結局人間が予想できる程度のことまでしかできません。
今の人工知能は、「弱い人工知能」として作られています。それは、正しいことも間違ったこともランダムに多様に行い、そこから確率的によい結果を生み出すものに次第に行動を収斂させていくという人工知能です。このやり方によって、人間が予想もできない優れた知能を発揮する人工知能が作られるようになってきたのです。
今、スマートフォンでネットを検索すると、音声入力でかなり正確な入力ができるようになっています。なぜこのように正確な変換ができるかというと、それは言葉を正確に聞き取れるようになったからではなく、大量のデータベースをもとに文脈的にあり得そうな言葉を選択できるようになったからです。
大量の知識や情報をもとに、最も妥当な判断をするという方向に、今の人工知能は発展しているのです。
すると、近い将来、人工知能が人間の頭脳に取って代わる分野が出てくることが考えられます。それは、大量の知識をもとに、正しい判断をするという分野です。
この大量の知識をもとに正しい判断をするというのは、人間の優れた能力のように思われがちですが、実は人間にとってはあまり得意な分野ではありません。