実質賃金の低下で消費も落ち込み
賃上げが「今世紀最高水準」だとか、パートの賃金も「過去最高」だとか言うが、それは名目の話で、厚生労働省の毎月勤労統計調査の「実質賃金指数」で見れば、4年連続でマイナスである。
指数 前年比
10 100.0
11 100.1 +0.1
12 99.2 -0.9
13 98.3 -0.9
14 95.5 -2.8
15 94.6 -0.9
実質賃金が伸びなければ消費が伸びるわけがない。総務省の「家計調査」が示す2人以上世帯の年平均実質消費支出の対前年比(月別は対前年同月比)のアベノミクスが始まって以降の数字はこうである。
13 +1.0
14 -2.9
15 -2.3
16/1 -3.1
/2 +1.2
/3 -5.3
/4 -0.4
消費は低迷を通り越して落ち込んでおり、消費がGDPの半分を占める最重要指標であることを思えば、この数字こそがアベノミクスの大失敗の明証である。
なお中小企業の倒産については、倒産件数と同時に「休廃業・解散件数」を見なければならない。特に個人事業主の高齢化と後継者不在は深刻で、倒産する前に廃業してしてしまうケースが多く、そうであれば倒産にはカウントされない。15年の休廃業・解散件数は2万6,699件で、リーマン・ショック後の09年の2万5,397件を上回っている。中小企業の総数は、12年の385.3万社から14年の380.9万社に4.4万社も減っている。
もう一度、上の安倍発言を見ると、短い文章の中に「24年ぶりの高い水準」「史上初めての出来事」「8年ぶりに増加」「24年ぶりの高さ」「25年ぶりのこと」「今世紀に入って最も高い水準」「過去最高を記録」といった言葉がこれでもかと散りばめられているが、ほとんどテキ屋の口上に等しいものであることが分かる。