NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は「小田原の役」における北条軍の戦略について。戦国の世で生き残る術を知っていたはずの北条家が、なぜ「小田原の役」で無謀な「籠城戦術」を選んだのでしょうか?そこには秀吉軍の思いも寄らない攻勢があったようです。
今回のワンポイント解説(6月12日)
今回は、小田原の役における北条軍の戦略について解説しておこう。一般に、北条軍はこの戦いで籠城戦術を採用し、秀吉軍の兵粮が尽きるのを待っていたと言われている。でも、援軍の アテもないのに籠城をつづけていたら、いずれはジリ貧になるのが戦理というものだ。戦国乱世をしたたかに生き抜いてきた北条家が、そんな勝ち目のない選択をするだろうか?
実はこの時期、北条氏政は伊達政宗としきりに連絡を取っており、南下した伊達軍との連携に期待していたことがわかっている。そればかりではない。北条軍は、小田原からくりだした主力部隊を箱根に展開して、東海道を下ってくる秀吉軍の主力を撃破する作戦構想を持っていた、と僕は考えている。この「箱根決戦構想」を前提に考えた時、北条軍が氏照や上田氏・成田氏などの精鋭部隊を小田原に結集させたこと、山中城を強化して4千余の守備隊を配置していたこと、各地の支城に自力での持久を指示していたこと、などの理由が整合的に理解できるようになる。
仮に箱根で秀吉軍の主力を完全に撃破できなくても、複雑な地形を利用していくつかの先鋒部隊を叩き、戦術上の緊要地を確保してしまえば、秀吉軍は箱根を突破できなくなる。こうなれば戦況は膠着して、秀吉側に不利になる。その間、北陸や信濃方面から侵攻した別働隊(実際には前田・上杉・真田隊基幹)は北関東を蹂躙するかもしれないが、伊達軍が南下すれば、牽制が期待できる。こうして「本国」である伊豆・相模・武蔵の絶対国防圏をキープして「時間切れ」に持ちこめば、北条家の存続は可能だ。おそらく、北条軍の基本戦略はこうしたものだっただろう。
しかし、三島に着陣した秀吉は、おそらく直感的に北条軍の戦略を理解した。そして、銃弾の雨をかいくぐり、屍の山を乗り越えるような強引な攻撃をしかけて、山中城を突破した。これにより「箱根決戦構想」は一気に崩れ、北条軍は籠城戦術へと転換した、というのが僕の読みだ。
「箱根決戦構想」を推測した根拠をふくめ、このあたりの話を詳しく知りたい人は、僕の『東国武将たちの戦国史』(河出書房新社 2015)第10章を読んでね!(西股総生)
《今週のワンポイントイラスト》
徳川軍の陣地、当時は湿地帯だったとか。もしかして、秀吉の嫌がらせ??(みかめ)
文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)
ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組
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・その1
第一部:小田原城のウラサンポ。解説:西股総生
第二部:居酒屋「北條水軍」にて、西股先生を囲んで北条トーク。
第三部:先生の解説付きで大河を観よう!
2016年6月26日(日)14:00〜
・その2
『西股総生氏トークイベント《第1部》「戦国軍事考証から見る城と合戦」』&『西股総生氏トークイベント《第2部》「対談形式 戦国軍事考証VS歴女」』
第1部「戦国軍事考証から見る城と合戦」 西股総生による講座。
第2部「戦国軍事考証 vs 歴女」 西股総生×磯部深雪×みかめゆきよみで「あのドラマ」を語ります。
2016年7月9日(土)14:00~17:00 新宿クラブツーリズム(アイランドウィングビル)
コース番号 第1部【C2021-912】
コース番号 第2部【C2022-906】
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今週の『真田丸』SNS反応【編集部まとめ】
北条氏政を見る、全国の戦国大名たちの心境は複雑だ。「ああなっていたかもしれない自分」を重ねるし、「華々しく散っていればよかった」と思う者もいる(おそらく作中の上杉景勝はそう思っている)。ここまで頑迷に抵抗し続ける北条氏政に、どこか皆快哉を覚えているのだ。故に皆惜しむのだ #真田丸
— 地雷魚『越天の空』イカロス出版より発売中 (@Jiraygyo) 2016年6月12日
三成が「おれが考える忍城攻略法!ドヤ!」の話してるときの上杉主従、真田父息子の表情を見て
「やめたげて!そんな顔して治部殿見るの、やめたげて!これでも一生懸命なんだから!」と叫んでた中学生娘。#真田丸— ぬえ (@yosinotennin) 2016年6月12日
この「コイツ何言ってんだ」って顔 #真田丸 pic.twitter.com/bB3mEwcuRs
— 葉月かみゅ (@haduki_kamyu) 2016年6月12日
しかし三成の話を聞いていた直江兼続の顔が凄かった
どう見てもチベットスナギツネだったw#真田丸 pic.twitter.com/Sp8wuVRt7u— シルフ@プロデューサー業はじめました (@shilfird_ti) 2016年6月12日
作中ではカットされましたが、新納慎也さん演じる秀次は、半日で箱根の山中城を強攻で攻め落とすという、荒武者ぶりを示しております。序盤で箱根という外殻陣地を失ったことで、北条はいきなり籠城以外の手を取れなくなったわけで、これは影のMVPともいえます #真田丸
— 銅大 (@bakagane) 2016年6月12日
北条を説き伏せるのってたしか官兵衛さんの役割だよね?ここで主人公に架空の活躍をさせるために法廷バトルもみっちり描いてたんですな。積み重ねだなぁ。 #真田丸
— tadataru (@tadataru) 2016年6月12日
三成「無駄が大嫌いなだけだ」
さすが三谷脚本。新撰組!での土方歳三と同じセリフ。
土方さんは五稜郭の戦いで榎本さんに無駄が嫌いなだけだと言い放っている。
同じ役者に同じセリフ、上手いね#真田丸 pic.twitter.com/TiYRDtXLLS— かいの趣味垢 (@kai_0406) 2016年6月12日
#真田丸【黄母衣衆】源次郎が背負っているのは母衣(ほろ)。矢や石の直撃を避ける補助的武具だったが、銃の時代以降は旗指物や栄誉の装束の役割に変化。秀吉は馬廻から選抜した武者に黄色い母衣を着用させ、その精鋭部隊は「黄母衣衆」と呼ばれた。 pic.twitter.com/GHGu2i4YYN
— とど兄ちゃん (@musicapiccolino) 2016年6月12日
気まずい別れ方をしてしまった元カノに会わせる顔がない男の子がするタイプのわかりやすい無視が可愛い(笑)#真田丸 pic.twitter.com/bKwsarzVCG
— 名前はまだ決まらない (@namaehamada_nai) 2016年6月12日
陣形図見れば見るほどホンットにえげつないよね秀吉#真田丸 pic.twitter.com/jkLnLvNJa4
— くろま@おいでよ真田丸の沼 (@kuroma_9) 2016年6月12日
その中で「乱世でしか生きられない男」がいる。出浦様、しかしそうなら何故「佐助に文を渡すところを信幸兄上に見せた」のか。理性では「乱世が終わる」ことは理解していても「自分では止められない」。だからこそ信幸兄上に一連を見せ、佐助を離させた。出浦様も苦しみの中にいる。 #真田丸
— もも。 (@T_Momobayashi) 2016年6月12日
三成の見事なまでの机上の空論に対する諸将の表情も印象的でした。
一応史実では忍城水攻めは三成ではなく秀吉の策。現地を見たことのない上司に、地形が大事な水攻めを指示されて三成が大変だったという事らしい。まぁ三成の戦下手は実際そうだろうけども。#真田丸— トヨタケ (@ng8KT) 2016年6月12日