「毒」と聞いても自分たちの生活にはあまり関係ないような気がしてしまいますが、それは大間違い。これからジメジメした梅雨の時期がやってくると、とたんに増えてくる「カビ」は立派な毒物です。きちんとした知識がないと命にかかわることも…。無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』では、身の回りのカビ毒が紹介されています。
暮らしと科学:身の回りの毒
実際身の回りにある毒物、毒性のあるもの…その筆頭といえるのは実はカビ毒です。
例えば、一夏、軒下に放置した米は黄変しており、そうした米を食べるだけで、肝臓がどんどん破壊されて、死に至ることもあるくらい、わりと強力な毒が生産されます。米はペニシリウム属のさまざまなカビが付くので、100%猛毒とも言い切れないのですが、大半が強力な肝毒性や神経毒性を持ちます。
また風呂場などの黒カビや赤いヌメリの中にいるカビなども、種類によっては、免疫不全を起こす凄まじい猛毒を生産するフザリウムの仲間などもいて、凶悪といえます。ただ、こちらは培養条件を限定しないと強烈な毒は生産しないのでそういう意味ではやや安全といえますが、清潔にしておくに越したことはありません。
また果実に生えるカビも長期的に服用すると発がん性の高いものが多いので、昔は毒殺に用いられたのではないかという文献もあるようです。故に少しカビの生えた食べ物は多少は食べても平気ですが毎日食べていると健康リスクがあるといえるわけです。
カビといっても真菌、無害な菌と有毒な菌は、区別が極めて難しく、例えば、アフラトキシンを生産するアスペルギルス・フラブスと、醤油や味噌のコウジカビは同じ仲間なので、顕微鏡での見た目はほぼ同じです。故に培養してそれらを分析したり動物実験、または紫外線での発光のスペクトルを見て…などの解析をして初めて有害なものかどうかわかります。
そういう意味で、毒性株を抽出して、それを純培養、そこから毒物を抽出しなければ…という意味では、最も生活に近い毒物でありながらも、最も縁遠い毒物というのがカビ毒といえるでしょう。
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