国民的映画「男はつらいよ」シリーズでタッグを組んでいた、フーテンの寅こと渥美清さんと監督の山田洋次さんですが、山田監督は渥美さんからかけられた「隠しぼめ」のひと言が今も心に残っているのだとか。無料メルマガ『がんばれ建設~建設業専門の業績アップの秘策』では、そんな渥美清さんの「隠しぼめ」とともに「陰ぼめ」のテクニックも紹介しています。
また一緒に仕事やりたいね
映画監督の山田洋次さんが演出家として駆け出しのころのことです。テレビドラマで初めて渥美清さんを演出することになりました。
山田洋次さんは、渥美清さんという喜劇役者としての才能を高く評価していました。しかし渥美さんのほうは山田さんをあまりよくは思っていないという噂も、山田さんの耳には入っていました。
経験や境遇が違い過ぎるのです。渥美さんは小さな劇場の幕間にやる余興のコント役者として芸を磨いてきた熟練者です。かたや、山田洋次さんは東京大学を出たエリートです。
渥美さんの中には、3歳年下の山田さんが「アタマでっかちの、青臭いことを言う演出家」といった先入観が働いていたのでしょうか。「そんなヒヨッコに、つべこべ言われたくない」という反発心があったのかもしれません。
さて渥美さん主演のドラマを取り終えた際、山田さんには「渥美さんと仕事をするのも、これが最初で最後。もうご一緒することもあるまい」という思いがあったそうです。
と、意外にも渥美さんのほうから、「あんたとは、また一緒に(仕事を)やりたいね」と、ひと言。山田さんは、うれしさがこみあげてきたそうです。
この「また一緒にやりたいね」という言い方、ストレートなほめ方ではありませんが、「山田さんの仕事を評価している」という含意が伝わり、それが山田さんの気持ちを動かしています。
これは見事な「隠しぼめ」です。