シンガポールといえば、大きく口を開けたマーライオンと、緑あふれるきれいな街並み!なんてイメージしか持たなかったのは、ひと昔前の話。今となってはアジア有数の先進国となったシンガポールですが、実は早くも経済低迷の兆しが見られるとか。最近シンガポールに行った人もそうでない人も、一緒にシンガポールの現在と今後について考えてみませんか?
変わる消費者のニーズと、つのる国民の不満
数年前にテレビに映る空飛ぶ船のようなマリーナ・ベイ・サンズを目にしたときには、それまでのシンガポールのイメージが一新させられ、その経済成長とゴージャスさに驚いたのを覚えています。
この5つ星ホテルでは、屋上に設置された巨大プールからシンガポールの摩天楼が一望でき、館内には家族で楽しめるスケートリンクの他、イタリア風のゴンドラが行き来する運河まで流れています。
まさにシンガポールの好景気を象徴する贅沢な演出。
高級ショップやレストランが軒を連ねる同施設内でショッピングを楽しんだ後は、ミシュランシェフの店で食事を楽しみ、カジノでナイトアウトなんて現実離れした優雅な休日の過ごし方を求める観光客も多いのでしょう。
ところが、そんなシンガポールの経済が早くも低迷し始めているというウワサがきこえてきました。
Bloombergによると、2010年にはGDP成長率が前年比で+14.5%と、過去最高の成長率を達成したシンガポールですが、2015年は前年比でわずか+2.5%にとどまっており、その景気減速は明らか。
経済低迷の理由としては、中国の経済低迷の影響が挙げられます。
中国はシンガポールを東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済・金融・貿易のハブとして、アジアで真っ先に自由貿易協定(FTA)を結ぶなど、経済的に大きく支えてきましたが、それはつまり、中国の経済が落ち込むと、その煽りを全面的に受けてしまうことにもなるのです。
加えて、国内ではこれまで政府が積極的に受け入れ、シンガポールの経済成長を支えてきた外国人労働者たちへの国民の不満が募っていることも影響しています。
というのも、ここ数年は国民の方が移民よりも失業率が高い傾向が続いており、職に就けない国民が特に金融セクターなどで働く外国人に対して不満を抱いています。
政府は外国人の就労基準を厳しくするなどして、国民の不満の高まりを抑える姿勢を示してはいますが、働き手である外国人労働者を規制すれば経済低迷に拍車をかけることにもなり、そう簡単に解決できる問題ではないようです。
また、多くの海外有名ブランドショップを取り込み、「Shopper’s Paradise (お買い物天国)」として施設を充実させてきたシンガポールですが、そもそもシンガポール国民は通販で買い物をすることが多く、外国人観光客にしても、シンガポールに限らずどこでも購入できるブランド品へのニーズは陰りを見せています。
その結果、同国でZARAやMarks & Spencerを展開してきたアルフテイムグループは年内に少なくとも10店舗を閉鎖すると発表しています。
そのかわりに、同グループはシンガポールよりもコストの安いマレーシアやインドネシアへの進出を計画しているとのこと。
失われた消費者たちの購買意欲を再び取り戻すためには、彼らのニーズを満たすようなシンガポールのオリジナリティが求められているのかもしれません。
他にも7四半期連続で住宅の値段が低下し続けるなど、抱える問題は多数のシンガポール。
英語を公用語とし、多くの移民を積極的に受け入れて、外資依存型経済大国として飛躍を遂げてきましたが、景気回復のためには大幅に見直すべき点が多々ありそうですね。
Image by: Shutterstock
Source by: Bloomberg, Sankei Biz
文/貞賀 三奈美