死者30人以上を出し、韓国をパニックに陥れているMERS(中東呼吸症候群)。日本に上陸しないとは言い切れないこの感染症の正体と予防法を、理研の特別研究員・安井真人さんが無料メルマガ『科学日誌』で詳述しています。
MERS拡大のメカニズムと対策
6月は韓国でのMERS拡大が話題になりました。韓国でMERSという感染症が広まり何名かはお亡くなりになっています。
●韓国MERS、死者32人に…感染者は182人 YOMIURI ONLINE
MERSとはMiddle East Respiratory Syndromeの頭文字をとったものです。日本語で「中東呼吸症候群」です。中東が発祥の地のためにMiddle Eastという単語がついています。
MERSの治療薬ですが、北朝鮮が開発したそうです。
しかし、北朝鮮なので胡散臭さが残ります。そのため、事実上治療薬はないと思った方がいいでしょう。
MERSに感染したら、自分は治ると自身の免疫システムを信じて安静にするのがベストです。
MERSの症状としては肺炎のようなものが起こります。死亡率が50%くらいととても危険な感染症です。MERSはMERSコロナウイルスによりおこる感染症です。インフルエンザと同じようにウイルス性のものです。
では、ウイルスとは何でしょうか?
ウイルスは自身では増殖できないのですが、細胞を利用して増殖することができます。細胞にウイルスが感染して、細胞に感染したウイルス自身を増殖させます。そして、ある程度の数のウイルスが完成すると、細胞を破壊してウイルスが外に出てきて別の細胞に感染します。
ウイルスは遺伝子を持っています。この遺伝子は常に一定ではなく増殖と共に変化していきます。この遺伝子の変化を変異と呼びます。
上記のようにウイルスは遺伝子をもち、常に遺伝子は変化しています。そのため、単にMERSコロナウイルスといっても、それぞれを見ていくとどれも遺伝子が少しずつ異なるわけです。人間と同じで、それぞれ少し違うのです。
このウイルスの進化は私たちにとっては厄介です。
例えば、これまで自分の犬にウイルスが感染したとします。このウイルスは犬のみに感染する種類のもので人には通常感染しません。
しかし、犬に感染しているウイルスにも変異により日々様々なもの生まれてきます。
そして、奇跡的に人間にも感染可能なウイルスが生まれることもあります。そうすると、自分の犬から自分へ奇跡的に生じたウイルスが感染することになります。これが新型ウイルス発生の原理です。
一度、人に感染するようになったウイルスは、人に感染しやすいようなウイルスに最適化していきます。感染した人の中でウイルスが急激に増殖して、多種なウイルスができてきます。
そして、多種な多様なウイルスの中から、人に感染しやすいウイルスが生き残ります。その後、この生き残ったウイルスがさらに、変異をおこし最適化していくのです。