もう一つは、中国での税制優遇措置を受けようということです。
実は中国には、外国企業が中国内で事業を行う場合、一定の条件を満たしていれば、税金を半分以下にするという優遇措置があります。
このヴァージン諸島につくられた「レナウンド・インターナショナル」という会社は、中国で銅製品を扱う事業をするものだということです。
しかし中国では、おそらく台湾企業については、外国企業として扱わず、外国企業の優遇措置の対象外になっていると思われます。そのため、ヴァージン諸島に会社をつくり、日本の商社にも参加を呼びかけ、中国の「外国企業優遇税制」を受けようとしたのではないか、ということです。
いずれにしろ台湾企業側には明確な租税回避の目的があります。
そして、伊藤忠、丸紅も間接的にその恩恵を受けることになるのです。つまり、伊藤忠、丸紅が参加している企業は、台湾、中国で租税回避をしているということなのです。
そして、伊藤忠、丸紅がそれを知らなかったはずはない、ということです。
また、そもそも総合商社というものが、タックスヘイブンをうまく利用し、課税を免れているというのは、以前から知られた事実です。
総合商社というのは、実はタックスヘイブンを利用した節(逃)税がしやすい業態なのです。
たとえば、2014年3月期の決算では、大手商社5社は、連結ベースで約2100~4450億円もの当期利益を計上していますが、税負担は極めて低いのです。なぜなら単独ベースでは、大手5社がそろって営業赤字になっているからです。
なぜこのようなことになっているのか、というと、彼らは、グループ全体の利益を、税金の安い海外子会社に移し、日本の本社では利益が出ないようにしているのです。
そのため、日本の本社は赤字となり、税負担が少なくて済んでいるのです。
日本の法人税率は名目上は約40%ですが、総合商社の実質税負担は多くの場合10%を切っているのです。
総合商社というのは、そもそもが「逃税」をしやすいのです。
総合商社は、複数国にまたがって子会社を設立し、グローバルに活動しています。
だから総合商社は、なるべく税金の安い国の子会社に利益を集中させようという、行動に出ることになります。自社グループの収益を税金の安い国に集中させて、グループ全体の節税を図る、ということです。
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著者/大村大次郎
元国税調査官で著書60冊以上の大村大次郎が、ギリギリまで節税する方法を伝授する有料メルマガ。自営業、経営者にオススメ。
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