昨年巻き起こった「お家騒動」の記憶も新しい大塚家具。実父との対決に勝ち経営権を掌握した大塚久美子社長は「家具・インテリア業界におけるリーディングカンパニーを目指す」という新たな経営方針を掲げましたが、売上で8倍もの差をつけられているニトリを追い抜くことはできるのでしょうか。無料メルマガ『ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座』の著者でMBAホルダーの安部徹也さんが両社の財務諸表を比較しつつ分析してくださいました。
大塚家具はニトリを抜き去り、業界のリーディングカンパニーになれるか?~両社の財務諸表を比較検証
4月22日、大塚家具の創業者で前会長の大塚勝久氏が新たな家具販売店をオープンさせました。
その名も「匠大塚」。
東京日本橋にオープンした1号店では、世界の熟練した家具職人が手作りで製作した高級家具が所狭しと並び、価格帯はその多くが100万円以上とかつての大塚家具のショールームを彷彿とさせます。
この1号店では、ホテルなどの内装業者をターゲットとして事業を展開していきますが、今夏には一般消費者向けの大規模店を大塚家具の創業の地である埼玉県春日部市にオープンする予定も明らかになりました。
娘と経営権を巡って骨肉の争いを繰り広げ、プロキシファイトで敗れた結果、大塚家具を追い出された父勝久氏ですが、新たな「匠大塚」では、かつてのように高級家具を丁寧な接客で販売し、自らが理想とする家具販売店を目指して、古巣の大塚家具と争っていくことになります。
大塚家具は騒動後、どうなったか?
一方、経営権を巡る騒動後、株主の支持を得て、反対派を一掃した久美子社長は、明確なビジョンを掲げ「新生大塚家具」をスタートさせます。これまでの徹底した接客で高級家具を販売するビジネスモデルから、気軽に入りやすい中価格帯の家具を販売するスタイルに転換を図ったのです。
そして、経営権争いが終息した昨年の4月には矢継ぎ早に「お詫びセール」と銘打って、大幅な値引きセールを実施。親子間の経営権争いを多くのメディアがこぞって報道した影響で、このセールの注目度も高まり、久美子社長が先着100名にガーベラの花を直接手渡した新宿店では初日だけで1万257人が来店するなどかつてない賑わいを見せ、期待を大きく上回る結果となりました。
「怪我の功名」で、これまで大塚家具を知らなかった顧客も、連日報道される父娘の経営権争いを契機に大塚家具の存在を知ることとなり、図らずも知名度がアップして、売り上げ増につながっていったのです。
月次の売り上げを見ても、経営権争いが激化した2015年3月は前年同月比62.2%と月商が前年に比べて38%も落ち込むという危機的な状況に陥りましたが、娘の勝利で新生大塚家具が新たな船出を迎えると、5月には感謝セールが大盛況に終わったことから前年同月比170%という驚異的な売り上げを記録。
終わってみてれば、2015年12月期は売上高が前期比4.5%増の580億円、経常利益は前期が2億4,000万円の赤字に対して6億3,000万円の黒字に転換するなど、2015年の前半は経営のゴタゴタが続きましたが、4月以降久美子社長の下で順調な回復を遂げた1年だったといえるでしょう。
ただ、新生大塚家具の将来は順風満帆かというと、そうでもないようです。2016年に入って、マスメディアの注目度も低くなると、売り上げも低空飛行を続けます。
1月は前年同月比89.3%、2月は96.3%、3月は前年62.2%と大きく落ち込んでいたにもかかわらず、その売り上げを超えることはできずに前年比88.2%に終わってしまいます。つまり、2年前に比べれば45%もの売上減に見舞われたことになるのです。
4月は前年同期比102.1%と、前年の18%ほど落ち込んだ売り上げ水準は超えることができましたが、このままでいけば、昨年の5月以降は驚異的な売り上げを記録した月も多いだけに、2016年は大幅な減収減益も現実味を帯びてくるといえそうです。