中国人観光客による「爆買い」は大きな話題となっています。特に日本製の電化製品は中国人に人気があり、家電メーカーや量販店では爆買いによる特需を期待する声も少なくありません。しかし、無料メルマガ『ビジネス発想源』の著者・弘中勝さんは、「過去から何も学んでいない愚かな発想」「あっという間に取り残されてしまうことになる」と一刀両断。はたしてその理由とは?
買われる本質
中国人による「爆買い」が話題になっています。でも、私は経済紙などを見ていて、中国人の「爆買い」の記事を読んだ時に、その例として炊飯器や紙おむつを挙げている記事はあまり信用しないようにしています。分かりやすくていい例ではありますが、分かりやす過ぎて、おそらく大した取材をしてないな、ということがアリアリだからです。
炊飯器や紙おむつより単価の高いものはいくらでもあり、またそういう店頭での買い物ではなくても、とんでもないものを買いあさっているケースは、まだまだいくらでもあるのです。不動産や温泉の源泉までもが買われている時代なのに、店先の様子だけで記事を書くのは、あまり取材力のある経済記者ではないな、と思います。
炊飯器や紙おむつのような分かりやすい「爆買い」は、あくまで一過性のようなブームに過ぎません。中国人が「爆買い」していくから、日本製の炊飯器をどんどん量産して爆買いしてもらう、というのは、過去から何も学んでいない愚かな発想です。
例えば今もう既に、日本製に匹敵するほどの味を出せるような中国製の炊飯器が、中国市場では出てきているのです。これまでは日本製よりも中国製のほうが品質が悪かったという背景があったからこそ炊飯器の爆買いの話は成立するわけで、それが根本的に覆されることが起ころうとしています。
現在急成長している中国の大手スマホメーカーである小米(シャオミ)は、その社名の兼ね合いもあってか、とても高性能の炊飯器を開発してしまいました。スマホメーカーだからスマホで連動操作できるのはもちろん、価格も日本製に比べて半額ほどの安さ。
「でも所詮は、日本製に勝てない品質なんでしょ」と思ってしまいがちですが、その新しい中国製の炊飯器を開発したのは、日本の旧三洋電機の炊飯器部門の開発部長なのです。要するに、高性能な日本製を作っていた日本人が、中国に買われて中国製を高性能にしているのです。
そうなってくると、日本製だ中国製だという比較は意味が薄いものになり、「日本製は良いものだ」と信じていた日本人は、あっという間に取り残されてしまうことになります。
「爆買い」というのは、店頭から商品をごっそり買っていくことがすごいのではなく、このように技術やノウハウをごっそり買っていく、というところが凄いのです。
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