前回、「世界が阿鼻叫喚。『パナマ文書の震源地』にいた日本人が語る現場の様子」で、文書流出直前にご自身がその目で見たパナマや英国領ヴァージン諸島での関係者たちの慌てふためく様を届けてくださった高城剛さん。メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』最新号では、日本をはじめ各国がこの問題に大きく踏み込めない理由と、G20直前に文書が流出した背景を記しています。
なぜパナマ文書はこのタイミングで流出したのか
今週も先週に引き続き、「パナマ文書」につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。
先週、このメールマガジンで「パナマ文書」の漏洩元であるパナマや多くのペーパーカンパニーがあるBVIで見てきた様子をお話ししたところ、テレビや新聞をはじめ、多くから取材依頼がありました。どうやら皆さんチンプンカンプンなご様子で、この問題の震源地はパナマでも、取材に行く先はパナマではなくBVI(英国領ヴァージン諸島)であることも理解できないご様子でした。
残念ながら、取材依頼には一切お答えしていません。なぜなら、後述しますが本件で日本の芸能界の重鎮の名前が出てきた途端、「なかったこと」にするのが日本のテレビ局だからです。ええ、モチロンただの妄想ですよ。
さて、まずパナマを理解する必要があります。米国の裏庭と呼ばれ、CIAによって何度も政変を「起こされた」パナマは、「第3の米国からの独立」とは表向きで、いまでも米国が強い支配力を持っている、事実上の属国です。そして、あらゆる中南米問題の「内緒話をする名所」として知られた国でもあります。
それゆえ、「人とカネのハブ」になっており、パナマ国内では、そのあたらしい利権にありつく金融関係および金融証券としての建築業の人々と、それ以外の人々の生活が大きく二極化しているのが現状です。この様相は、1年ほど前に訪れた際にブログにも掲載しました。
その「人とカネのハブ」を法律的に取りまとめるのが弁護士事務所で、そのひとつが、今回事件の発端となった「モサックフォンセカ」でして、そしてペーパーカンパニーを設立するのは、パナマではなくBVI(英国領バージン諸島)なのです。なぜなら、BVIなら無税だけでなく、決算の必要もないからです。
実は、このスキームを日本人も多く使っており、直接パナマの法律事務所とやりとりする人は滅多におりませんが、香港の金融関係や弁護士事務所を通じて、カリブ海のオフショアにペーパーカンパニーを設立する人は相当数いまして、僕の友人知人にも何人もいます。そこには日本の大企業だけではなく、日本の芸能事務所なども含まれます。
特に自分の正体を隠したい買収や不動産取得などに関して、カリブ海のオフショアにペーパーカンパニーを「ビークル」にする日本人は、枚挙にいとまがありません。何も知らないふりして、内情をよく知る友人知人の会社を買収しようとするときにも使っています。
正直言えば、BVIを使ったスキームは10年前トレンドであり(それ以前は、ケイマン諸島)、同じように、表沙汰にこそなりませんが情報漏洩が何度も起きたシンガポール同様、ここ最近のBVIは、理解がある人たちに率先して使われるタックスヘイブンではありませんでした。それゆえ、事実上「弁護士に丸投げ」している人たちがよく利用することになりまして、結果、このスキームで安易に儲かる&危険を孕むのは、その間に立つ人々となります。
また、犯罪者は言うに及ばず、政治家および関係者が秘匿性の高い金融口座を持つことに関しては、公人としての情報公開性の問題だけでなく、金融業界に多大な影響力を持つ点から、利益相反する可能性があります。だから、政治家のオフショア利用は、モラルではなく実質的な(実益のある)問題になるのです。