「人間学を学ぶ月刊誌」を謳う雑誌『致知』から注目記事を無料配信してくださるメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』。今回は、「和太鼓の響きに認知症改善効果が見られた」という和太鼓専門の会社社長が綴った随想が紹介されています。
和太鼓の新たな可能性を開く
私たちの仲間が静岡県の特別養護老人ホームに和太鼓の慰問に行きました。すると、「お年寄りたちの顔つきや反応が他の慰問の時とは明らかに違う」と言われたというのです。
医師である施設の理事長が不思議に思って、和太鼓グループを10日間ほど施設に招いてお年寄りたちに演奏を聴かせ、時には太鼓を叩かせて、どのような変化があるかを調べました。
驚いたことに、39人の認知症のお年寄りの8割に改善が見られました。
「きょう何を食べましたか」
「子供さんの名前は?」
といった30のチェック項目に対して、半分程度しか答えられない軽度の患者の多くが20問以上回答できるようになったのです。明らかな変化でした。
この奇跡に誰よりも驚いたのは、他ならぬ私自身です。
大学の研究室でさらに調べた結果、太鼓の振動が前頭前野を刺激して脳を活性化させることが分かりました。
もしかしたら、伝統芸能である和太鼓の響きが、お年寄りたちの心に作用して日本人としての魂を目覚めさせたのかもしれない、そう1人で合点したものでした。
長年、和太鼓をビジネスとして確立させることの難しさを味わってきた私にとって、疾病予防、健康増進、職場のストレス解消、さらには体力づくり、仲間づくりにと和太鼓の可能性が開けたこと、そして、そこに関連する仕事が増えてきたのは何よりの喜びです。
ソーシャルビジネスであると確信する理由もそこにあります。
東 宗謙(太鼓センター社長)
『致知』2016年4月号より抜粋
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