毎回、日本社会の問題点を鋭く指摘しその解決策を探る無料メルマガ『日刊! “信頼の社労士”が思う、「仕事の本質」』の著者・小田一哉さん。そんな小田さんが今回取り上げるのは、厚生労働省の「キャリアアップ助成金健康管理コース」。非正規雇用の労働者が法定外の健康診断を受けられることにつながるため「良い制度」だと受け止められていますが、その裏には巧妙な仕掛けがあるのでは、と小田さんは指摘します。
より詳細な健康診断の目的は?
厚生労働省の助成金に「キャリアアップ助成金」というものがあります。
「キャリアアップ助成金」には6つのコースがあり、その中の1つに「健康管理コース」というものがあります。このコースは、有期契約労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施した場合に助成します。
例えば法定の定期健康診断項目とは、身長・体重、胸部X線、血圧、尿検査…、概ねこれが「法定の定期健康診断項目」です。35歳、40歳以上は、上記に加え、心電図や血液検査が法定項目に入るので、これら以外の例えば、腹部エコー健診、胃カメラ等の健診は法定外となります。
この「キャリアアップ助成金健康管理コース」は、パートタイマーや契約社員といった有期契約労働者にとって、手厚い、法定外の健康診断を受けることができるようになるゆえ、「これは有期契約労働者にとっても、会社にとっても、良い制度だ」と多くの人は思うかもしれません。
しかし…、果たして本当に良い制度なのだろうか? 私は常々、ちょっと穿った見方をしています。
ここ数年、芸能人が健康診断を受け、その健診結果について、出演している複数の医師が解説する、という番組が意外と目立ちます。そして、番組では病気の「早期発見、早期治療」を強く勧めています。これも「良いこと」のように報じられ、「早期発見、早期治療」をすることが病気を防ぐとても大事なこと! として結論付けるのです。
こういう傾向と「キャリアアップ助成金健康管理コース」、これらは「同じ目的」を持っていると私は思っているのです。
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