シリア、「化学兵器」を使ったのは誰だ?!
長くなってきたので、最後の例にしましょう。オバマは2013年8月、「アサド軍が化学兵器を使った」ことを理由に、「シリアを攻撃する!」と宣言しました。
「アサド軍が化学兵器を使った」
日本ではほぼ100%の人が信じているでしょう? では、国連は「誰が化学兵器を使ったか?」について、どんな報告をしていたのでしょうか? 一字一字、熟読してください。
シリア反体制派がサリン使用か、国連調査官
AFP=時事5月5日(月)配信
[AFP=時事]シリア問題に関する国連(UN)調査委員会のカーラ・デルポンテ調査官は5日夜、シリアの反体制派が致死性の神経ガス「サリン」を使った可能性があると述べた。
スイスのラジオ番組のインタビューでデルポンテ氏は、「われわれが収集した証言によると、反体制派が化学兵器を、サリンガスを使用した」とし、「新たな目撃証言を通じて調査をさらに掘り下げ、検証し、確証をえる必要があるが、これまでに確立されたところによれば、サリンガスを使っているのは反体制派だ」と述べた。
どうですか、これ? 国連が調査した結果、化学兵器を使っていたのは、「アサド派」ではなく、「反アサド派だ!」と。
そろそろうんざりしてきましたね。私は何がいいたいのか? これらの例でもわかるように、
「情報戦では、『ウソ』をつくのが日常茶飯事」
だから、日本が、「真実であることを証明できれば、すべてうまくいく」と信じているのは、「あまい!」ということ。
フセインは、「イラクには大量破壊兵器はない!」と真実を語っていました。しかし、彼は処刑された。イランは、「核兵器開発などしていない!」と真実を語っていました。しかし、アメリカはそれを知りながらイランを非難し続けた。アサドは、「化学兵器を使ったのは反体制派だ!」といっていました。しかし、いまだに欧米は、「アサドを追放せよ!」と主張しています。
こんな世界で、「真実であることを証明できれば、すべてうまくいく」というのは、ナイーブすぎるのです(もちろん、真実、事実を拡散しつづけるのは、とても大事です。ここでは、「それだけでは不十分」という話をしています)。
image by: Everett Collection / Shutterstock.com
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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