防衛大よりはるかに予算を使って国に貢献していない大学がある
そして、おそらく日本でただ1冊であろう防衛大学校の任官拒否を取り上げた単行本『リーダーのいない経済大国』(太陽企画出版)を書棚から取り出してみました。
なかなか読み応えがあると自画自賛しながら読み進む打ち、これだけは再掲載しておかなければならないという部分に行き当たりました。「食い逃げ」批判に対する反論です。
任官しない防大卒業生は、ほんとうに『食い逃げ』なのか。ここに、ひとつの数字がある。
昭和60年度の防大の年間予算は92億300万円で、大学院に当たる理工学研究科を含めた2300人の学生総数で単純に割ると、ひとりあたり年間400万円かかっている。むろん、衣食住の費用と学生手当を含んでいる。 これが、海上保安庁の幹部要員を養成する海上保安大学校だと、防大とおなじ衣食住と学生手当てつきで、年間11億円の予算を200人の学生が使うわけで、ひとり547万円にもなり、防大の比ではない。
日本のトップエリートを生み出している東京大学ともなれば、1万3817人の学生に対して、981億1300万円もの予算がついている。東大で必要とする膨大な研究費の問題は考慮しなければならないが、単純に割れば、学生ひとりに防大の倍近い710万円が使われている計算になるのだ。
卒業生の国への貢献度でも、防大だけが非難されるいわれはない。最も国費を使っている東大では、60年度の国家公務員上級職試験合格者546人、司法試験合格者80人で、全員が国に就職したとみなしても、学生全体のわずか4.5%にしかならない。
船長、機関長など海の専門職の養成が目的の国立東京商船大学では、海運不況のあおりを受けているとはいえ、学生ひとりに年間264万円をかけながら、船乗りになったのは卒業生のわずか27%、39人にすぎなかった。おなじとき、防大30期生は410人の卒業生のうち、任官しなかったのは22人、明確な意思で任官拒否した者はそのなかの15人でしかない。
任官拒否について、ジャーナリズムがいかに事実を伝えていなかったかは、以上のデータでも明らかであろう。
出版社が乗ってくれたら、電子書籍にでもして広く読んでもらいたいと思い始めています。
『NEWSを疑え!』より一部抜粋
著者/小川和久
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
<<無料サンプルはこちら>>