ユニクロが「安いけどダサい」から脱却できた“常識破りの戦略”

 

単品訴求のスタイリッシュなテレビCM

80年代のDCブランドは、ファッション雑誌との連携を強めることで、消費者への情報発信を行った。その後のアパレル業界もそれに倣っている。テレビは、視聴者のターゲットを絞れないので、ファッションには向いていないと思われていたのだ。

ユニクロは、ファッション雑誌というメディアとの相性が良くなかった。明確なターゲット設定をせず、ベーシックなアイテムをエイジレスで展開していたからだ。

ユニクロが採用したのは、一つのデザインに絞ったテレビCMだった。当時、テレビCMを多用していたのは量販店企業だった。量販店の発想は、高額な費用を掛けるのだから、一つでも多くの商品を見せたいというものだった。様々なアパレル製品を来た複数のモデルが歩いているようなCMだ。

ユニクロは、量販店とは正反対の手法を採用した。フリースなら、フリースの商品だけを取り上げ、スタイリッシュな映像を作り上げ、文字やセリフに頼らず、あくまで視覚的に訴求する。生産も単品であり、売場も単品訴求。そして、CMも単品訴求である。ユニクロほど徹底して単品MDを展開しているアパレル企業はない。

一つ一つのアイテム開発力に秀でており、オンリーワン、ナンバーワンの競争力を持っているのである。

本気のネット販売

ユニクロがインターネット通販を始めたのは2000年である。当時既にユニクロの店舗は400店舗を超えており、イギリスへの海外出店も行っていた。

その中で、インターネット販売に着手したことは評価していい。現在に至るまで、本格的なネット販売ができていないアパレル企業の方が圧倒的に多いのだ。逆に言えば、日本のアパレル企業がネット販売を直営で行っていないので、ZOZOTOWNのような業態が成立したとも言える。

ユニクロは、2002年に中国上海に一号店をオープンしたが、不調に終わった。しかし、2006年には、アジア最大の店舗を上海正大広場に出店し、成功を収めた。2009年には、中国アリババグループの「タオバオ」に出店し、これも海外ブランドで一位の売上を上げている。

中国のネット通販は、チャットと連動している。顧客は発注してから、チャットで価格交渉等を行うのが一般的だ。そのため、ユニクロは24時間体制でのチャット要員を確保し、対応しているとのことだ。

通常、店舗で成功した企業は、その成功体験に引きずられるものだ。日本のSPA企業の多くがネット通販に消極的なのも、店舗拡大による成功体験があるからこそである。

ユニクロは、目先の成功体験に溺れることなく、長期的な戦略を展開している。中国出店に見られるように、何度か失敗しても、やり直し、最期には成果に結びつけている

このことは、他のアパレル企業も見習ってほしいと思う。

image by: March Marcho / Shutterstock.com

 

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著者/坂口昌章(シナジープランニング代表)
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