3月22日、致知出版社より発売される『歴史の遺訓に学ぶ』。無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』にて、堺屋太一・渡部昇一両氏が徹底討論した最新刊の中から、堺屋氏が織田信長について述べた評論の一部が特別公開されています。さすがは信長、と妙に納得してしまうエピソードです。
もし、信長が新国立競技場をつくったら?
信長は安土城で相撲の興行をよくやりましたね。
その第1回目の相撲の興行が終わって、人がいっぺんに退散したらたちまち混乱して石垣から落ちて怪我人が出たんですよ。それで家来の丹羽長秀に「この次は怪我人が出ないようにしろ」と命令したんです。
そうしたら奉行たちが集まって、道路を広げたらいいとか、橋を付け替えなきゃいかんとかいろいろ議論をして、「費用もかかるし、時間もかかるけれど、いかがいたしましょうか」と信長に具申すると、信長は
「おまえたちは馬鹿だな。混乱するのはみんながいっぺんに帰るからだ。それを分散させる手を考えればいいじゃないか。最後に何か1つ付け加えれば、それを観るやつと観ないで帰るやつに分散するから混乱しないだろう」
といって、弓取り式というのを考え出したわけです。確かに最後に弓取り式をやると、それを観る人もいれば観ないで帰る人もいますから混乱しないんですね。
ハードではなくてソフトで解決する。これは天才的な発想だと思います。
2020年の東京オリンピックの新国立競技場の問題も、そういう柔軟な発想がないからお金ばかりかかってしまうわけですよ。あれは織田信長だったら500億円でできますよ(笑)。
「歴史の遺訓に学ぶ(日本を拓いた偉人たち)」(堺屋太一・渡部昇一/致知出版社)より抜粋
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