一方、冒頭の記事では、昨年12月の本土からの香港来訪者は前年同月比で15.5%も減少したことを伝えています。香港の商店経営者によれば、中国人による購入額はここ数十年で最悪だということで、ここでも爆買いが完全に終了していることを示しています。
実際、日本でも「爆買い」はかつてと様変わりしていて、高級品を買い漁るということは少なくなってきているようです。日本での爆買いの背後には、組織的な転売が目的であることも多く、ガイドが中国人観光客や留学生、在留者を雇って、指定した品物を買わせて、それを集めて業者に渡して稼ぐということがありました。その利益は購入価格の5割から数倍にもなることがあると言われています。国内外の価格差を利用した中国人の商法です。
ただ、そうした事例もかつてほど目立たず、実用品を購入するくらいで、むしろ旅行における体験を重視する人たちが増えているといいます。イベントなど、「もの」から「こと」への関心が高まっているといいます。
● 訪日中国人、4年後に1,140万人 「爆買い」も主目的ではなくなる!? 誘致の鍵は地方か?
その背景には中国経済の減速があることは間違いないでしょう。李克強首相も2月15日、世界の株式相場の下落を受けて、中国経済は多大な困難と新たな不確実性に直面しているという認識を示しました。まるで世界経済が不安定だから中国経済もその影響を受けているかのような言い方ですが、そもそも中国経済の減速懸念が世界に波及して不安要素になっているのですから、話の順序が逆です。
もっとも、中国の1月の輸出は前年同月比11.2%減という大幅な落ち込みで、これで7カ月連続の減少ですから、海外情勢のせいにしたくなるのも仕方がないのかもしれません。輸入も18.8%の減少で15カ月連続ですから、原油価格の下落があるとはいえ、内需も冷え込んだままだということがわかります。これだけ需要が減れば、組織的な爆買いが一段落したのも頷けます。
一方で、前述のシドニー同様、日本での中国人による爆買いの変化は、金持ち層が減り、そのかわり若者層の来日が増えたため、ショッピングよりも旅行そのものが目的になったともいえます。香港の投資銀行グループのCLSAは、日本を訪れる中国人旅行者について、2020年までに1,140万人にものぼると予想しているそうです。