アメリカは、中国にだまされた?
さて、この本の中で、ピルズベリーさんは、「中国にだまされた!」例をたくさんあげています。
1.つながりを持てば、完全な協力がもたらされる
アメリカは、「中国の発展を支援すれば、中国はより協力的になっていく」と、ナイーブに信じていたそうです。
2.中国は民主化への道を歩んでいる
「経済が発展すれば、中国は民主化にむかいはじめる」と、ナイーブに信じていたそうです。そうなっていないこと、私たちも知っています。
3.はかない花、中国
中国政府は、アメリカ人に、「中国は問題だらけで、滅亡の危機に瀕している」と泣き言をいいつづけた。これは中国の作戦で、自分をわざわざ弱く見せることで、さらなる協力を引き出す罠だった(自分を強く見せるマッチョ・プーチンと反対で興味深いです)。
4.中国は、アメリカのようになることを望んでいる
実をいうと、中国の指導者は、「策略を善しとする『孫子』」を誇りに思っており、アメリカのようになる気はまったくない。
5.中国のタカ派は弱い
実をいうと、中国では「世界制覇を実現する」という「タカ派」こそが「主流」である。これ、1970年代から40年以上も中国と深く関わってきたスパイの見方です。2010年の「尖閣中国漁船衝突事件」以降、「反中」で盛り上がっている日本国民には、
「ホンマかいな?」
「なんとナイーブな…」
「そんなんでよくスパイやってたよね」
「見事にだまされているよね」
「スパイ失格」
などという言葉が脳裏に浮かぶでしょう。しかし、日本国民の「中国観」が「世界標準ではない」ことも知っておく必要があります。実際、世界57か国が、アメリカの警告を無視して、中国主導の「AIIB」に参加したというのは、大変なことなのです。残念ながら、イギリスもドイツもフランスも、「日本は過去の国。中国は未来の国」と、少なくとも2015年3月時点で認識していました(だから、AIIBに参加した)。
そして、実際に会った人が、一貫して同じ態度でウソをつき続ける時、いくらスパイでも、「ウソ」と「ホント」の判別が難しくなるものなのです。ピルズベリーさんが、本当に中国のウソを信じていたのか、それとも「反中プロパガンダ」を展開しているのか、わかりません。しかし、事実として欧米のリーダーたちの多くが、上のような「中国観」をもっていたことは間違いないでしょう。それで、日本政府はいつも、「アメリカは、同盟国の日本より、実は中国を重視しているのではないか?」と不安だった。この本を読むと、「実際日本より中国を重視していた」ことがはっきりわかります。