世界三大投資家のジョージ・ソロスが中国を見限ったという話は以前にもお伝えしましたが、これをさらに大きな視点で見ていくと、彼を筆頭とする国際金融資本のみならず、世界中が覇権国家にのし上がろうとする中国に騙されていたことがわかります。いったいどのような手口を使っていたのか、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の中で、著者の北野幸伯さんがわかりやすく解説しています。
国際金融資本は、中国にだまされていたのか?
アメリカで2015年2月、私が「歴史的」と呼ぶ本が発売になりました。アメリカを代表する超大物「パンダ・ハガー」(パンダを抱く人=親中派)だったマイケル・ピルズベリーの「China2049秘密裏に遂行される『世界覇権100年戦略』」。
この本は、全国民「必読」です。ピルズベリーさんは現在、ハドソン研究所中国戦略センターの所長。国防総省の顧問も務めている。また、アメリカの政策に大きな影響力を持つ、「外交問題評議会」「国際戦略研究所」のメンバーでもある。
さらに「裏の顔」も存在します。本に書いてしまっているので、完全に「裏の顔」ともいえないですが、ピルズベリーさんは24歳の時から、アメリカのスパイとして働いてきた(p 40)。
CIA、FBI、国防総省の協力を得て完成されたこの本。私は、一読して、
「アメリカの国策が変わる!」
「これからは対中国が最重要課題になる!」
と確信しました。それで、
- アメリカは、ロシアと和解する。ウクライナ問題は事実上終わる
- アメリカは、中東への関与を大幅に減らす
- 中国問題に集中するようになる
と書き、実際そのようになっています。これは、なぜでしょうか?
アメリカには、3つの重要地域があり、3つの問題がある。3つの重要地域とは、
- 欧州
- 中東
- アジア
です。そして、3つの問題とは、
- 欧州=ロシア、ウクライナ問題
- 中東=シリア、イスラム国問題
- アジア=中国、南シナ海、東シナ海問題
です。アメリカは、世界3つの地域で戦っていましたが、中国が最重要課題になったので、
「中国問題に集中するため、他二つの地域の問題を終わらせるだろう」
こう読んだわけです。実際、ウクライナでは、2015年2月の停戦合意が、今も続いています。そして、シリアでは先月末、米ロの仲介で停戦がなされました。シリアについては、いまだ不安定ですが、「米ロが真剣に和解を望んでいる」ことが「最重要ファクター」です。そして、アメリカは中国問題に取り組んでいく。
私は、この本を読んで、なぜこのような見通しをたてたのでしょうか? ピルズベリーさんは、この本で「中国には世界制覇の野望がある!」ことを信じさせようとしています。それが事実なのかどうかはともかく、「中国には世界制覇の野望がある!」と「信じさせようとしている」ことは、100%間違いありません。