福島第一原発1号機の内部調査のために、格納容器内に投入されたものの、調査途中で不具合を起こし機内に残置された2台のロボット。にもかかわらず東電は計画通りに調査ができたと言います。これに対して原発事故を追い続けるジャーナリストの木野龍逸さんは数々の疑問点を指摘、さらに相変わらず情報を開示しない東電の体質を批判しています。
福島第一にロボットの屍累々──現場調査の困難さと不十分な東電説明
4月10日から東京電力と国際廃炉研究開発機構(IRID=プラントメーカーや電力会社による組合)は、福島第一原発1号機の格納容器内部に有線で遠隔操作するロボットを投入し、内部調査を行った。
調査に利用したロボット2台のうち、1台目は調査途中で身動きがとれなくなって残置され、2台目は回収のための監視カメラが見えなくなって、やはり残置された。
当初計画では2台とも回収することになっていたが、回収できない場合はリモコンのケーブルを切断して残置することも代替案として用意されていたことや、もともと再利用する予定がなかったことから、東電は、計画通りに調査ができたという認識を示した。といっても作業の困難さは隠しようもなく、今後の工程が楽観できないことが改めてはっきりした。
次回調査に向けた格納容器下部(地下階)に至る入口部分にはロボットの走行に障害となるようなガレキがなかったことが確認できたことは、成果として報告された。しかし、当初計画ではCRDレールという制御棒交換設備の確認も予定されていたが、カメラで視認することはできなかった。
また東電は、格納容器内部に大きな損傷は見られないという説明をしているが、ロボットが走行したグレーチング(道路の側溝などに敷いてある網目状の床材)は塗装がはげ、激しく劣化しているようにも見えた。配管類も断熱材がはがれ落ちるなど、損傷は小さなものには見えず、これらの損傷が事故直後のものなのか、それとも経年劣化によるものなのか判然としないのも気になるところだった。もし経年劣化なら、これから何十年にもわたる作業の中で配管類が断裂するなどして、冷却水がうまく格納容器内に入れられなくなるおそれもある。
作業員の被曝量が大きかったのはなぜか
ところで、なぜ1台目のロボットが走行不能になったのか、なぜ2台目のロボットまで格納容器内に放置することになってしまったのかについての説明には、疑問が残った。この疑問が解消されないと、また東電は同じミスを繰り返すのではないか、という懸念が払拭できない。
ここでは、なぜ1台目のロボットが走行不能になったのかについて考えてみたい。
東電は4月13日の会見で、グレーチング間の隙間が思っていたよりも広く、そこにはまってしまったと説明した。つまり、モックアップと現場が異なっていたということを意味していた。この説明が正しければ、作業を担当した日立製作所や日立ニュークリア・エナジーの計画が甘かったということになる。
1台目の調査では、格納容器内部で原子炉の外周をぐるっと一周するように設置されたグレーチングを、反時計回りに進んでいく計画だった。ところが途中にガレキのような落下物(正体不明)があり、これを避けるために当初のルートを変更し、狭い部分を通ろうとしたところでスタックした。