「源泉かけ流し」の定義、実は業界でもバラバラ。本当は何なのか?

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温泉旅館のパンフレットを見ると、よく書かれているのが「源泉かけ流し」。この文字を見るだけでホッと安心して宿を選んでしまう日本人ですが、実はこの定義、各温泉旅館はおろか、業界団体や温泉評論家などの間でも解釈がバラバラなんだそうです。かつて全国誌「旅行読売」の編集長をつとめた、メルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』の著者である飯塚さんは、業界の識者による「源泉かけ流しの定義」がいかにバラバラかを紹介。「源泉かけ流しって、そもそも何なの?」という方、必読です。

“源泉かけ流し”の定義とはナンだ?

今号は過去のメルマガとも重複する部分があるのだが、前号で予告した通り、今一度、“源泉かけ流し”の定義というものはどんなものかを解説したい。

この話は拙著にかなり詳しく書いてあるので、興味のある方は、ぜひご一読いただけるとうれしい。

拙著をすでにお読みいただいている方はすでにご承知の通りだろうが、現在、「源泉かけ流し」という言葉で紹介されているものがバラバラなのである。拙著で取り上げた業界の識者の方々の間でも、以下の通りバラツキがある。

*『旅行読売編集部=かけ流し併用も含め循環は不可。 加温、加水については認める。 消毒は不問。
 
*『旅の手帖編集部=単なる「かけ流し」と表現する場合は加温、加水は認める。 「源泉かけ流し」の場合はいずれも認めない。 循環は不可。 消毒に関してはどちらも不問。
 
べっぷ温泉Gメンの齋藤雅樹氏=循環は不可。 消毒はとくに罪が重い。ただし、加水、加温に関しては泉質や源泉温度に応じて許容する場合もある。
 
温泉チャンピオン郡司勇氏=循環、加温、加水は認めず。 消毒に関しては条例の定めによる場合は不問。
 
日本温泉総合研究所・森本卓也氏=源泉かけ流し自体に、それほど関心はない。 かけ流し循環ともに、否定も肯定もしない。
 
温泉教授・松田忠徳氏=循環は不可。 消毒は断じて認められない。 ただし加水に関しては、泉質や源泉温度などに応じて許容する場合もある。
 
温泉評論家・石川理夫氏=循環、加温、加水は認めず。 消毒に関しては、条例の定めによる場合は不問。
 
日本温泉遺産を守る会・野口淳氏=「源泉100%かけ流し」は、循環、加温、加水、消毒のすべてを認めず。 「源泉かけ流し」は「源泉100%かけ流し」に、温度調節を目的とした”加水””加温”までは許容。

こうして並べてみてもわかる通り、識者や団体によって微妙に違うのだ。

これが温泉施設になると、もっとバラバラで、ひどいところになると「循環・かけ流し併用システム」でも、源泉かけ流しを謳っているところもある。 とはいえ、彼らには悪気はないと思われる。 ただ単に、言葉の意味をわかっていない」のである。 だから、かけ流しを少しでも謳えるような湯遣いをしていれば、悪い言い方をすれば、ご都合主義的に源泉かけ流しを標榜しているというわけである。

これは利用者にとっては、かなり戸惑う表現、言葉だということになる。本メルマガ読者は温泉好きの方が多いと思われるので問題ないかもしれない。だが、温泉に詳しくない人がこうした「源泉かけ流し」という売り文句を見聞きしたら、それが「循環併用」であっても、かけ流しだと信じるはず。これは、僕としては黙ってはいられないのである。

そんなわけで、僕は『温泉失格』を書くことになったといってもいい。拙著では、「源泉かけ流し」の言葉の定義に付いて、これが現状ではベスト、という分類に付いても詳述している。

これについては、次号でご紹介するとしよう。

image by:Shutterstock

 

『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』より一部抜粋

著者/飯塚玲児
温泉業界にはびこる「源泉かけ流し偏重主義」に疑問を投げかけた『温泉失格』の著者が、旅業界の裏話や温泉にまつわる問題点、本当に信用していい名湯名宿ガイド、プロならではの旅行術などを大公開!
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