90年代のバブル期までに求められていたのは、マニュアルやルール通りに物事を進められる人材でした。しかし現在、そんな人材は必要とされていません。無料メルマガ『起業教育のススメ~子供たちに起業スピリッツを!』の著者・小林正観さんは、これから求められるのは「マニュアル人間」ではなく「マニュアルを創り出す人間」だと語ります。あなたは、自分の子供をマニュアル人間にしますか、それとも創る側の人間にしますか?
マニュアル、ルールは必要だけど、それだけでいいのかな…?
みなさんは、テレビやパソコン、洗濯機などといった電気機器を取り付けたり、使用したりする際に、説明書やマニュアルなどを見ながら、または読みながら進めますか。それとも、自分の感覚で取り付けたり、使ったりしていますか。
私自身は、状況にもよりますが、説明書などを見ながら、取り付け作業をしたり、使用したりすることが多いですね。本号では、そのマニュアルやルールについて、考察していきたいと思います。
1990年代初頭までの、いわゆる高度経済成長期、バブル経済などと言われた時代は、機械産業を中心とした工業化社会でした。その工業化社会の中にあって、私たちは、マニュアルやルールによって機械の使い方などを覚えることが重要とされてきました。そして、そのマニュアルなどを正しく実践することによって、モノやサービスを生み出し、価値を提供してきました。
そういった時代背景の中で、人への教育、訓練などにおいては、いち早くマニュアルやルールを理解し、記憶するかといった能力を育成していくことが重要視されていたように思います。
そういった工業化社会では、理屈抜きに、「マニュアルやルールはこうだから、その通りにするように」と言われることが多かったのではないでしょうか。何の疑問を持たない人であったり、言われたことを一生懸命に、他の人よりも早く、正確に実行する能力を持った人であったり、そういった人が、最も望まれた人材像だったような気がします。私も、学生の頃、社会人に成り立て頃は、こういった人材が求められているのではないか、と思っていました。
その中で、「このマニュアルやルールはちょっと違うのではないか」などと考えるような人は、秩序を乱したり、混乱を起こしたりする異端児のような存在だったでしょう。このような時代背景、環境の中にあっては、物事を記憶すること、そして、その記憶したことを間違いなく実行することを中心とした「本人に考えさせない教育」と言えるような人材育成が、長い間続いてきたように思います。
ですが、情報化社会、グローバル社会、サービス化社会、知価社会などと言われる社会環境の中では、「自分はマニュアルやルール通りに忠実に動く機械ではない」と考え、実行、実践する人が求められていくことが、増えていくのでしょうね。
決して、マニュアル、ルールを否定しているわけではありません。例えば、お客との接客する際には、その企業、組織として大事にしている理念、価値観などを盛り込んだマニュアル、ルールは、必要と言えます。
ただ、マニュアル、ルールに則って杓子定規に実行したからといって、目の前のお客が満足、感動するかといえば、そうではないと思います。みなさんは、もしお客として何らかの接客を受けている時に、その相手がマニュアル通りにただ動いているようだと感じたら、どのように感じるでしょうか。
マニュアルなどに従うだけではなく、マニュアルやルールを創ることができるような人材、つまり、マニュアルやルールを前提としながら、目の前の人が喜ぶこと、お役に立つようなことを、自ら考え、行動、実践し、マニュアルなどをレベルアップすることができるような人材を育成していくことが、大切になってくるでしょう。
では、子どもたちに、マニュアルやルールを創る機会を考えてみましょう。例えば、近年、大雨や地震などによる災害が多く起こっています。そこで、家庭の中で、「うちの防災マニュアル」を考えてみてはいかがでしょうか。災害が起こった時に、何が必要になるか、非難ルートはどうするかなどといったことを、子どもたちが調べたり、考えたりしながら、親御さんは、そのサポート役になって、その家庭独自のマニュアル、ルールを創ってみることもできるのではないでしょうか。
子どもたちにとっては、自分で考えるという学びの場になるでしょうし、家庭内でのコミュニケーションの場にもなるのではないでしょうか。
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