あまり報じられてはいませんが、集合住宅で電力自由化絡みのさまざまな問題が起きていることをご存知でしょうか。メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者である廣田信子さんは、サービス開始の4月までにマンションの一括受電の契約を取ろうとする業者の動きが加熱しすぎて、脅しまがいの事例も発生していると警鐘を鳴らしています。
電力の完全自由化を前にして
こんにちは! 廣田信子です。
4月からの完全電力自由化(個人が好きな会社から電気を購入できる)に向けて、各社の宣伝合戦が激しくなっています。
昨年の記事で、「マンションの一括受電の電力の完全自由化」について書いたときは、まだ、どんな商品が生まれるか読みにくかったのですが、この5か月で大きく変わりました。
実は、4月の電力自由化までにマンションの一括受電の契約をまとめたいという一括受電を扱う会社の営業が激しくなっているようで、暮れにいくつか相談がありました。
今は各戸が既存の電力会社(関東なら東京電力)と契約しているので、一括受電に切り替えるにあたって各戸に東京電力との契約を解除してもらえばいいのですが(全戸の契約解除は、決して簡単なことではありませんが…)、しかし完全自由化になって、各戸がばらばらに、他のサービスとセットで電力購入の契約を結ぶようになると、解約がより難しくなります。
それで、3月末までに何とか一括受電に切り替えたいという動きが、これまで一括受電を検討してきた管理組合で起こっているのだと思います。
現時点では、やはり一括受電の方が電気料金の削減効果は大きいようですが、以前にも書いたように、10年~15年変更できないという縛りがあると、本当に今の段階で切り替えていいのかどうか迷うのも致し方ないと思います。
私が気になったのは、総会の特別多数決議で一括受電に切り替えると急に決まったが、個人的には、完全自由化を前にした今の段階で、契約を切り変えたくないと承認の印を押さない人に対して、一括受電の業者が、「印を押さないと管理組合が裁判を起こしますよ。裁判になったら、あなたが負けることは判例でも明らかで、損害賠償を求められることにもなりかねないですよ」と脅すよう話をしているという相談が続いたことです。
何度も言っていますが、こういう全員の承認が必要になるようなことは、合意形成に時間を掛ける必要があります。3月までに切り替えたいからと急いでも難しいのです。ましてや、こんな脅しのような話をしたらこじれるばかりです。
一括受電の業者の言う判例というのは、2010年11月29日の横浜地裁の判例を、都合の良いように解釈したか、知識がないためにそう思い込んでいるかだと思います。