時は幕末。鎖国中の日本人に愛されたスイス人時計師の数奇な運命

2016.01.18
by gyouza(まぐまぐ編集部)
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スイスの高級腕時計ブランド「ジラール・ペルゴ」を日本に広めるため、フランソワ・ペルゴ社が創立されて150年になったことを記念した「フランソワ・ペルゴ展」が去る12月19日〜24日まで横浜の「ヨコハマ創造都市センター」で開催されました。19世紀の貴重な時計などが数多く展示されるということで、興味津々のMAG2NEWSは喜び勇んで横浜まで取材に行ってまいりました。

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みなとみらい線「馬車道駅」にほど近い、会場の「ヨコハマ創造都市センター」。1929年竣工の「旧第一銀行横浜支店」を改装した趣あるたたずまいが歴史を感じさせます。

スイス時計を日本へ持ち込んだ男、フランソワ・ペルゴの生涯

日本に初めてスイス時計を正式に輸入したフランソワ・ペルゴは、1834年にスイスで生まれました。実の姉であるマリー・ペルゴは、夫のコンスタン・ジラールと共に、かの有名な高級腕時計ブランド「ジラール・ペルゴ」を創立した女性です。ジラール・ペルゴ社が世界進出する中、フランソワ・ペルゴは1860年から横浜に住まいを構え、アジアでの販路を拡大。日本で初めてスイス製時計の販売を開始しました。1865年にはF.Perregaux & Co.社を設立し、1877年に亡くなるまで、ジラール・ペルゴの正規代理店を務めていたということです。

フランソワ・ペルゴ社が日本に設立されてから150年を記念した今回の展示会では、日本上陸当時を偲ばせる貴重な時計や資料がズラリと展示されました。まずは、その魅力的な時計の数々をゆっくりと見ていきましょう。

世界初とされる極薄サヴォネット懐中時計

左手前に吊されている黄金の時計は1800年頃に作られたサボネット懐中時計です。サヴォネットとはフランス語で「石けん箱」を意味します。この極薄タイプはイエローゴールドのケースで彫金、ギョーシエ彫りがほどこされたMoulinier Bautte & Cie社のものです。

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右手前は1835年頃にJ.F.Bautte & Cie社で作られた、装飾ペンダント時計。ブルーを基調に、エナメル製のハーフパールの花模様がほどこされています。左奥は1820年頃Moulinier Bautte & Cie社で作られたイエローゴールド製の懐中時計。

1888年製の傑作トゥールビヨン

上写真の右手前は1888年に製造された「スリーブリッジ トゥールビヨン」です。ジラール・ペルゴの傑作とされる懐中時計も実に魅力的なクラシック時計でした。こちらは、ニューシャテル天文台の1級証明書を取得しています。ニューシャテル天文台とは、スイスで開催されていた時計の精度を競うコンクールを意味します。紋章が入ったギョーシェ彫りのゴールドケース、エナメルの文字盤を採用し、トゥールビヨンムーブメントを搭載する、当時の最先端技術を盛り込んだ高性能モデルなのです。

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左手前はジラール・ペルゴ社により1860年頃製作された、小冊子型ペンダント時計。彫金とブルーエナメル装飾が施されたイエローゴールドケースが使われています。奥には1870年頃にジラール・ペルゴで製作された、十字型のペンダント時計も見えます。

兄が作ったマリン・クロノメーター

フランソワ・ペルゴの兄、アンリ・ペルゴもまた家業を支える重要な人物でした。こちらは、そのアンリ作とされ、1860年頃に出身地であり時計の聖地でもあるスイスのル・ロックルで作られたマリン・クロノメーターです。洋上で正確な時刻を刻み、また、経度を正確に割り出すことができました。

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船が波にもまれても正確な時刻を示すという、水平を保つ木製ケースの作りの良さにまず感心。ブラウンにゴールドケースと白の文字盤のバランスが美しく、現代でも充分通用するデザインです。

幕末の日本人に愛された、異邦人フランソワ・ペルゴ

日本初の時計師とされるフランソワ・ペルゴは、横浜に居を構え、没後は同じく横浜にある外国人墓地に埋葬されたことでもわかるように、日本とのつながりが大変深い人物でした。大政奉還(1867年)の約3年前という幕末の江戸で、スイスと日本は通商条約を締結しましたが、そのために派遣されたエメ・アンベール使節団の特派員が、フランソワ・ペルゴだったのです。

外交官エメ・アンベールは帰国後の1870年『幕末日本図絵』を出版します。その特派員としてフランソワ・ペルゴが活躍した結果、彼自身もまた日本の文化への造詣を深めていったのです。

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1870年に仏・パリの出版社であるアシェット社から2巻で発刊された、エメ・アンベール著『幕末日本図絵』。外交官からの要請で、フランソワ・ペルゴは日本の歴史、民衆伝説、おとぎ話、子供の歌などを収集。横浜の写真家から写真を抜粋してスイスに送り、同著の完成に貢献しました。

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フランソワ・ペルゴの義兄であるルシアン・ランドリがニューシャーテルの自然科学博物館に寄贈したという、獅子面も往時を偲ばせます。

現代のジラール・ペルゴ

ジラール・ペルゴは、フランソワ・ペルゴの時代から150年ほど経った今も時代の最先端であり続けています。そんな現代のジラール・ペルゴの技術力を代表するモデルも展示されていましたので、簡単にご紹介しましょう。

こちらは2013年に発表された「コンスタント・エスケープメント L.M.」です。斬新な構造と設計から誕生した脱進機構を使い、エネルギーロスを抑え正確な時を安定して刻むことに成功したという、画期的な高級複雑機械式時計なのです。

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人の髪の毛の1/6という14ミクロンのシリコン製の曲がったブレードを使っています。自動車業界における「カーオブザイヤー」の時計版「ジュネーブ国際時計グランプリ」で、2013年の最優秀賞を受賞したというのも納得の技術です。価格は税抜きで1348万円となります。

ドレス・スーツのファッションショーも同時開催

デザイナーの村岡勝重さんによる「DRESS SUIT FASHION SHOW」が同時開催されました。ゲスト出演には俳優の加藤雅也さん、桧山あきひろさん、浜田学さんという豪華メンバーが揃い、会場はいっそう華やかな雰囲気となりました。

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左から桧山あきひろさん、村岡勝重さん、加藤雅也さん、浜田学さん。

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 MEN’S BIGI(メンズ・ビギ)で菊池武夫氏に師事し、その後独立して「Yin & Yang(イン&ヤン)」ブランドを設立した、デザイナーの村岡勝重さん。現在は新宿高島屋オム・メゾン「スタイルオーダー」コーナーのスペシャルラインモデル『KATSUSHIGE MURAOKA PLUS7(カツシゲムラオカ プラス7)』を監修されています。

村岡さんはモードとクラシックを絶妙にバランスさせる天才。今回お披露目されたドレス・スーツも、モダンクラシコの最先端を感じさせる、すばらしい作品でした。

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4月29日公開予定、三池崇史監督の映画『テラフォーマーズ』に出演予定の俳優・加藤雅也さん。50歳を超え、さらに男の色気に溢れていらっしゃいます。村岡さんにはオトナの着こなしに合ったデザインをお願いしたとか。ファッションモデルもご経験された加藤さんならではのドレス・スーツへの愛情が感じられました。

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映画『クアラルンプールの夜明け』に主演された桧山あきひろさん(左)。村岡さんのエレガントなスタイルに魅力を感じられたそうです。

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大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』では真田幸村役を演じ、映画にも多数ご出演されている浜田学さん。マオカラーの個性的なシルエットがお気に入りだそうです。

『男子専科』によるプレミアムなパーティー

今回のフランソワ・ペルゴ展で、高級ブランド「ジラール・ペルゴ」と村岡氏のドレス・スーツ ファッションショーの同時開催が実現したのは、紳士の美学・ダンディズムを追求する雑誌『男子専科』とWebマガジン『男子専科 STYLE』のサポートによるもの。

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プレミアムパーティを主催した男子専科の会長、春山氏(左)と社長の山﨑氏(右)。

クラシックデザインこそ、今のデザイントレンド

フランソワ・ペルゴが日本に本場のスイス時計を輸入してから150年あまり。すでに幕末にはスイス製の時計が使われていたという事実に改めて驚きました。しかし、19世紀の時計とはいえ、今にも通じるモダンなデザインはどれも魅力溢れるものでした。村岡さんのファッションデザインコンセプトではありませんが、クラシックデザインは、今のマテリアルデザインのトレンドであると再認識しました。

男子専科STYLE http://danshi-senka.jp/

 

取材・文/堀ミキヒロ

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