世界を股にかけ、幅広いメディアで活躍中の高城剛さん。最近ではノマド的生活をしていることでも注目を集め、その経験を書いた本も出版されています。そして、ベストセラー作家として多くの小説やコラムを発表し続けている石田衣良さん。近いようで遠い世界にいるお二人が、自身の視点で日本の出版業界の先行きについて語り尽くしたスペシャルトークのPart2です。お二人の有料メルマガをご購読いただいている読者限定で公開している対談を、特別に一部だけお見せします。かつて出版業界と同じ局面を迎えていた洋服業界は生き残りを賭けてどのような手段をとったのか? そして高城剛さんの考える打開策とは…?
●特別対談Part1 高城剛×石田衣良「これからの出版はライブと同じ」
出版のカタストロフィは近いうちに必ずおとずれる
高城:まず、僕は新参者の作家です。だから、既存の出版業界から嫌われようが他にはできない新しい挑戦をもっとしたいし、同時にデジタル化とは逆の方向にも力を入れたいと思っているだけなんです。
石田:正直言って出版の世界は、本に代わる新しい柱が作れないという話で、みんな思考が止まるんですよね。「作家はライブとかないし、大変だよね」というところで、みんなが止まって、何も動かないのが現実なので。でも、昔はありましたよね。文藝春秋の「文化講演会」みたいに作家を何人か呼んで、日本中を巡るんですよ。で「今、東京では、何があるんだ」ということを話していたんですが、それかもしれないなぁ。
高城:ただ、渋谷公会堂の時も、大きい出版社に話を持って行ったら「何か事故が起こったらどうするんだ」って言われて。講演会で事故は起きないって(笑)。
石田:刺されない限りね(笑)。そこら辺に関しては、今の出版業界の頭の硬さというか、動きの悪さもありますよね。必ずネガティブなことを言って、前例がないと言って潰そうとするんだよね。
高城:経営陣の問題のような気が、僕はしますけどね。よく「電子書籍の話を聞かせてくれ」と言われて、大きい出版社に行くと、はじめは電子書籍の担当部長が出てきて、その後は担当役員、担当常務と、どんどん位が上がって行くんですよ。それで最後に社長にお会いすると「何だ、あなたの決断の問題じゃん」というところに行き着きます。経営が新しいことをジャッジメントできない。
石田:これまで本は、基本的に刷って問屋に卸せば、あとは何もしなくても売れていたんですよね。それで「何もしないのはいいことだ」って、頭に染み付いているんですよ。思考が役人と一緒で、実際には動けないんです。だから、たぶん別の人間が決定できるポジションに来るか、この状態が持ちこたえられないくらいのカタストロフィが来るまでは、何も変わらない気がしますよ。
高城:カタストロフィは、遠くないうちに間違いなく来ますよ。
石田:そうなんだよなぁ。だけど、いわゆる紙の世界で、そのことを考えて先に動いている人ってほとんどいないですよ。電子系の担当の人って、窓際でもうこの人ダメだなって人ばっかりじゃないですか。エースがまわってこないので……それが厳しいんだよなー。
高城:雑誌が広告収入に依存してきてしまったというのもあるでしょうね。出版社の人間も目線が広告代理店みたいになってますからね。あと、タレント主義。とにかく、リスクを少なくするためにどうするかと考えいて……新しいことはできないですよ。