普段なにげなく使っている日本語ですが、よく考えてみると不思議な文字表記ってありますよね。例えば、「オタク」と「ヲタク」は同じ意味でも印象が違います。メルマガ『1日1粒 !「幸せのタネ」』では、文字表記体系の中でも特別扱いされている「ヲ」について詳しく解説。ところで、日常的に「ヲ」使う場面ってありましたっけ…?
「お」と「を」と「ヲ」
みなさんは「ヲタク」という表記は見たことはありますか?
「オタク」とは意味が違うそうです。
※どう違うかは使う人によってこれまた異なるようですが。
この「ヲ」という文字。
平仮名の「を」に対応する片仮名なのですが、この文字は、文字表記の体系では仲間はずれの扱いです。
片仮名の表記に関しては、平成3年に出された『外来語の表記』という内閣告示がひとつの「よりどころ」になります。
そこには
ア イ ウ エ オ
ガ ギ グ ゲ ゴ
パ ピ プ ペ ポ
キャ キュ キョ
ン ッ ー
という一般的な文字と、少し外来語らしい
シェ フィ
などの文字と
ウィ トゥ ヴェ
などの外来語の原音・原つづりに近づけるための文字が一覧表として挙げられています。
全部で103ありますが、なんと「ヲ」はありません。
なぜでしょう?
「外来語」ですから,基本的には全て名詞です。
「を」は、日本語の中では「助詞」という文法的な機能面に特化した文字です。
ですから、名詞を表す時には使われることはない、というのが基本的な考え方となって、「ヲ」は表の中に出てこないんですね。
戦後、昭和21年に『現代かなづかい』が出されるまでは、歴史的仮名遣いで表記していました。
「思い出」は「思ひ出」
「買う」は「買ふ」
「考える」は「考へる」
などと表記するものです。
少し古い書籍を開くとこのような表記に出くわします。
今では「お」に統一されましたが、
尾 十日 踊る 青い 悪寒
などは
を とをか をどる あをい をかん
と書くものだったのです。
ところが、『現代かなづかい』が定められた時に「現代語の音韻にもとづいて表記する」ということで、「お」と「を」は同じ音なので、「お」に統一する、となったのです。
助詞の「を」は役割が別なので特別扱いです。
『現代かなづかい』は昭和61年に『現代仮名遣い』になりますが、基本的には同じ考えです。
ただ、『現代仮名遣い』も『外来語の表記』も、あくまで「よりどころ」です。
これ以外の方法で表記してはいけない、というものではありません。
ですから「ヲタク」などという表記をしても、それが大きな問題になるものではありませんが、表現上のユニークさは出てくるでしょう。
みなさんは、「ヲ」をどこかで見かけたことはありますか?
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