一方、デザインは全長を短くして全高を上げ、コリッとさせて「見やすく」しています。ただ見やすくなるということは「一般化」するということと近いですね。そこで、ノーズをしっかりさせ、ルーフの後ろをおもいっきり下げて、「一般化」から今風の「カッコイイ」方向を少し入れたのだと思います。
つまり、「スマートブランドデザイン」を意識した先代のデザインコンセプトは捨てました。実際、初代より多くのユーザーに受け入れてもらえそうな、数を狙えるデザインになったと思います。
これってよく考えると非常にまっとうな優等生の考え方とやり方です。もちろん、それでおかしくはないのですが、開発チームの気持ちを思うとコレではチョット逃げ道があるということになってしまうのではないでしょうか。
新車開発って少しでも気を抜くと良いものができなくて、全員がギリギリまで頑張りぬくことでやっと良いものができる。ホンダで開発チームをまとめていた立場でしたからよくわかります。
フォーフォーのコンセプトは会社都合なのか?
どういうことかと言うと、開発の狙いに、「こういうコンセプトのクルマを創りたい」という意思があるのでなく、会社の都合もキチッと入れてその中でできるだけ頑張る、ということになると「できるだけ頑張りゃいい」につながってしまい、「ふんどしを締め直して」いませんよね? 再チャレンジで、必達・必勝となると「決死の覚悟」とはかけ離れているわけです。
私だったら、コンセプトからオールニューで開発チームに創造するようにして、開発メンバーにプレッシャーをかけます。会社にもそうさせてくれと言います。新しいこれからの「シティコミューター」を再考するのか? 全く新しい取り組みにしてしまうのか? 基から考え直すということに対し開発メンバーと会社にも迫るわけです。メルセデス・ベンツにそのくらいの資金が無いはずはありません。
初代のフォーフォー(2代目スマート)は言いましたように「コンセプト」は破綻していました。何をもって「シティコミューター」なのか? シティコミューターとしての強い提案が無いなら「スマート」という名前を変えるべきだったのです。
今回も、「スマート」という名前を踏襲していますから、メルセデス・ベンツが考える「新しいシティコミューター」を提案して欲しかったです。つまり、「フォーツー」におけるシティコミューターとは? 「フォーフォー」におけるシティコミューターとは? だって、メルセデス・ベンツの哲学は「Best or Nothing」でしょ。
国内では、今回「フォーツー」は限定販売です。数を売るクルマでなく、「好きなユーザー」「気に入ってもらえるユーザー」にキチンと買っていただく施策だと思います。しかし、「フォーフォー」は数をある程度販売したいクルマだと思います。
そのせいか、価格は大変リーズナブルになっています。国産車じゃ好きなクルマもないし、街に多く走っているクルマは嫌だし、メルセデス・ベンツブランドは憧れ、という価値観のお客さんは少なくないと思います。
このように当面のビジネス的には良いかもしれませんが、そのコンセプト的にはやはり「分からん」商品ですね。これで、担当の編集者が「今度のフォーツーはまだしも、フォーフォーの意味が分からん」と言っていた理由がみなさん、おわかりいただけましたか? つまり、造る側のご都合でつくられたクルマの匂いが強いから、すんなりユーザーに溶け込めないというわけです。
文/繁浩太郎
image by: Auto Prove
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