中国があえて「武装船」で尖閣を領海侵犯しなければならない国内事情

2016-01-03 23.14.26
 

去る12月26日、またもや中国海警局の船が尖閣諸島周辺領域へ侵入しました。しかし今までと大きく異なる点が一つ。それはその内の一隻が「武装船」とおぼしき船だったことです。メルマガ『NEWSを疑え!』の著者で軍事アナリストの小川和久さんが、なぜ「武装船」が領海侵犯したのか、その経緯と中国の国内事情について解説しています。

「武装」中国船が領海侵犯 尖閣周辺、ほか2隻も

26日午前9時半すぎ、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に中国海警局の船3隻が相次いで侵入した。1隻は機関砲のようなものを搭載しており、領海外側の接続水域を航行しているのが22日から確認されていた。第11管区海上保安本部(那覇)によると、武器のようなものを装備した中国船が領海に侵入するのは初めて。

この船は海警31239で、他の2隻は海警2307と2308。中国当局の船が領海侵入するのは20日以来で、今年に入って35日目。尖閣周辺での航行が確認されたのは7日連続。

海上保安庁の巡視船が領海から出るよう警告したのに対し「貴船はわが国の領海に侵入した。ただちに退去してください」と応答があった (12月26日付け産経新聞)

武装した中国公船が姿を現したとの海上保安庁の発表は12月22日で、直ちにマスコミが報道することになりました。

当然、ネット上では「撃沈してしまえ」といった子供じみた声が飛び交うことになりましたが、実を言えば中国側にも似たような過激な反日世論が少なからずあり、それに苦慮している中国側が国内の声に応えるために示したのが、今回の武装公船の領海侵犯だったと受け止める必要があるのです。

これまでにもお話ししてきたことですが、中国共産党政権が頭を悩ましてきた国内問題の最たるものは、固定化してしまった経済格差に対する国民の不満が「愛国的動機」や「反日を隠れ蓑として噴出し、政権の基盤を揺さぶる事態です。なにしろ「愛国無罪」という言葉が飛び交う中で警察車両に乱暴狼藉を働いても、動機が動機だけに取り締まりもままならない。かといって、それを放置すれば政権転覆にエスカレートすることさえ憂慮される。

そこで共産党政権は、日米両国とは軍事摩擦が起きないぎりぎりのところで公船による領海侵犯や海軍艦船によるレーダー照射などを行い、それが日本のマスコミのニュースになるよう仕向けてきたのです。日本のマスコミが大騒するほどにニュースはリアルタイムで中国国内に拡がり、弱腰批判を封じることにつながるというわけです。

「日米両国とは軍事摩擦が起きないぎりぎりのところで」と言いましたが、いくら中国が軍事力を増強したところで相手が日米両国ということになれば、どんな些細な衝突でも世界的な戦争にエスカレートする要素を含んでおり、事態の推移如何によっては中国に進出している国際資本の撤退という事態を招きかねず、そうなってしまったら中国経済はとどめを刺されることになりかねません。経済がアウトになれば、軍事力増強どころではなくなります。

だから中国側は、軍事衝突が起きないようにする一方で国内的に言い訳できるだけのニュースが流れるよう、腐心してきたといってよいのです。

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