よく「無欲な若者」「消費しない若者」といった言葉を見たり聞いたりしたことがあると思いますが、この言葉に対して「そうだ、そうだ!」と言っているオッサンは本当に現代の若者の実像が見えているのでしょうか? 無料メルマガ『ビジネス発想源』の著者・弘中勝さんは、このことを例に、経営者にとって「世の中を見通す目がいかに重要か」を教えてくれています。
自分で世の中を見る
「若者が消費をしなくなった」という経済記事を、よく見ます。昔に比べて、若者は車も買わない、本も買わない、何も買わない、だからお金が回らず経済が上向かない、そんな論調で書かれています。
そういうものを読むと、いかにも「若者はもっと経済のためにお金を使うべきだ。俺たちが若い頃はそうしてきたじゃないか」という、オッサンの理屈です。
じゃあ、本当に今の世の中は、若者がオッサンよりも働いてオッサンより成果を出せばオッサンよりも正当な報酬や名誉がもらえる世の中か?そして、そんな報酬をたくさん手に入れても、果たして若者がお金を払って買いたいと思うものを、オッサンたちは開発・製造してきたか?
そういうことを考えてみると、若者が消費をしなくなったというのは単純に、オッサンたちが若者が消費したくなる仕組みを作っていないだけ、ということになります。つまり、若者が昔に比べてだらしなくなったのではなく、若者は時代に合わせて賢い選択をしているだけで、「昔に比べて」「昔はこうだった」というオッサンは時代に合っていないだけなのです。
実際、若者はお金を使わないかというと、そういうことはありません。きちんと、使いたいことには使っているのです。
自動車業界の人からすると「若者は車を買わない。消費をしない」、出版業界の人からすると「若者は本を買わない。消費をしない」と見えるのかもしれませんが、それはその世界だけしか視野を持っていない人からするとそう見えます。
しかし、何が若者にウケているのかという世の中全体を見通す目があれば、「えー、こんなことにこんなにもお金払ってるのか!」ということはすぐ分かります。経済誌の記者も恐らくそんなことは取材の中で余裕でつかんでいるんですが、そんなことを書いてもオッサン読者は理解できないので、オッサン読者に目線を合わせて「若者はダメだ」という論調の記事にしているだけなのです。
そういう記事に洗脳されずに、自分は自分で、若者の動向を見たり、若者と話したりして、若者は何にお金を払いたいと思っているのかを自分なりに把握すればいいのです。自分に合わせた記事ばかりを読んでいると、今までの自分の視野と同じレベルでしか世の中を見ることができません。
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