一般的に「玄米」と聞けば、健康のために食べるという印象がありますが、玄米に含まれる「アプシジン酸」が体に悪い影響を与えているかもしれない、としたらあなたはどうしますか? この玄米に関する疑問について、医学博士・しんコロさんが『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の中で回答しています。はたして、その答えは?
玄米は体に悪いって本当なの?
Question
ヨガのインストラクターをしている友人は、食にもこだわりお米は無農薬のものを農家と契約して玄米で購入し、お米は3分つきくらいに精米して、糠もいろいろと活用していると聞いていました。どうやらその友人、最近「玄米には発芽抑制物質のアブシジン酸があるから体に良くないと聞いて、食べ方を見直し中」とのことで、意見を求めてきたのですが、私は「一つ一つの成分には良くないものもあるかもしれないけど、全体でみれば、作用を打ち消しあったりするのかもしれないよ、なにしろ昔から食べてきたものだし」などと無責任にも誰かの受け売りっぽくも、知ったかぶってしまいました。後ですこし調べてみると、免疫にも関係する物質らしく、収穫後乾燥が進んだ野菜にも生成されるとか。こうなると、一体何が身体に良くないのか知りたくなり、質問させて頂く次第です。アブシジン酸ってどのような働きをするものなんでしょうか?
しんコロさんの回答
アブシジン酸は植物ホルモンとして発芽抑制をする役割を持っており、種子に多く含まれています。玄米にも含まれているアブシジン酸が健康に害を及ぼすのではないかということは議論されてきました。その理由の1つに、アブシジン酸によって引き起こされる酸化ストレスにより、ミトコンドリアが損傷を受ける可能性があるという示唆があります。一方で、りんご、フラックスシード、アーティチョークなどにもアブシジン酸は多く含まれますが、米国では健康に利点があるのではないかという意見もあり、見解は様々です。免疫学的にはアブシジン酸は抗炎症作用があることが知られています。インフルエンザ、糖尿病、炎症性腸疾患のマウスモデルで炎症を抑える効果が報告されており、医薬品としての可能性も研究されています。
しかし、健康な状態でアブシジン酸を日常的に多量に摂った場合の疾病リスクなどははっきりしていません。いずれにしても、薬品応用が検討されるほど作用の強い物質なで、日常的な摂り過ぎは避けた方が無難であるとは言えるでしょうね。
さて、アブシジン酸は玄米の発芽スイッチが入ると減少するので、一晩玄米を水に浸すことでその量を減らすことができます。ただし、これは玄米が生きていることが条件で、すでに加熱乾燥されている玄米でしたらこの方法では効果がありません。また、アブシジン酸は熱に弱いので玄米を炒ってから炊くという方法でもその量を減らすことができます。また、質問者さんのご友人のように3分づきくらいにまで精米する方法も良いでしょう。
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