シェール革命で原油・天然ガスともに世界一の生産国となったアメリカ。日本もその恩恵を受け、今後はガソリン代も電気代も下がる見込みとなっています。一方で、アメリカと中東との関係は悪化。これらの現状を無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんはどのように見ているのでしょうか?
アメリカ、40年ぶり原油輸出解禁の衝撃
「クレムリン・メソッド」で予想していたとおり、「シェール革命」で「原油生産世界一」「天然ガス生産世界一」になったアメリカが、40年ぶりに、「原油輸出」を解禁しました。
毎日新聞12月19日。
オバマ米大統領は18日、原油の輸出を解禁する条項を盛り込んだ法案に署名した。
その背景は、なんでしょうか?
米国は第1次石油危機直後の1975年以来40年間、原油輸出を原則禁止してきた。
生産量も大幅に減少したが、技術革新によって地下深くの頁岩(けつがん=シェール)層からの原油採掘が可能となる「シェール革命」が実現。
2008年ごろから一転して生産が急増し、14年にはサウジアラビアを抜き世界最大の産油国になった。(同上)
もはやアメリカは、「サウジアラビア」を超える「世界一の産油国である」というのは、驚きですね。そして、ロシアをこえる、「世界一のガス生産国」でもあるこのことは、アメリカの外交を大きく変えています。
ブッシュが大統領になった2001年、「アメリカの原油は2016年で枯渇する」と予測されていた。このことは、アメリカの外交を「アグレッシブ」にする大きな要因だったのです。
実際03年の「イラク戦争」について、FRBのグリーンスパン元議長は「イラク戦争の原因が『石油』であることは、『誰もが知っている事実』だ!」と自著の中で暴露しています。
ところが最近、「アメリカに石油・ガスはありあまるほどある」ことがわかった。それで、中東への関心が薄れている。
2013年9月、アメリカはシリア攻撃をドタキャンした。その後、イランとの和解に踏み切った。2015年7月、イランと合意し、「核問題」を解決した。
2014年8月から、「イスラム国」(IS)を空爆している。しかし、「反アサド」でもあるISは、欧米に都合がいい存在。だから「ダラダラ空爆」で あまり成果が出ていない。それ以前に、そもそも中東に関心がない。メンドイので、「プーチンにやらせときゃいいか」となっている。
こういう状況で、放り出されたのが、サウジアラビアやイスラエルです。だから、この両国とアメリカの関係が悪化している。「イスラエルロビー」のパワーが急速に衰えている。