イスラム国(IS)をはじめ、世界各国で治まる気配がないテロ攻撃。これらを起こしているテロリストたちについて、先進国の識者らの間では「貧困層の出身者が多い」と信じられてきました。しかし、静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之さんは、軍事アナリスト・小川和久さんのメルマガ『NEWSを疑え!』で、それらの説を一蹴するデータが存在すると指摘。そこで浮かび上がってきたのは、中産階級以上で高学歴者ばかりという実情でした。
テロは貧困が原因ではないとするデータ
経済的不平等に関するベストセラー『21世紀の資本』の著者、トマ・ピケティ・パリ経済学校教授が、「テロ対策 治安一辺倒では不十分だ」というコラムを11月22日付ルモンド紙に寄稿し、邦訳が12月1日付朝日新聞朝刊に掲載されている。
ピケティ氏は、中東は石油君主国の一握りの支配層に富が集中する、世界一格差の大きな地域だと指摘し、「イスラム国」などのテロリズムは「不平等が蔓延する中東の火薬庫で育まれたのだが、その責任は私たち(先進国)に大いにある」と論じている。
不平等と貧困が生む「屈辱と不公正」がテロリズムの主な原因だとする説は、先進国で広く信じられている。テロリズム貧困原因説は、「忌まわしいことをする人は、よほど人生に絶望しているに違いない」という、先進国国民の直感と一致しているからだ。
しかし、ここにピケティ教授の主張を一蹴する研究結果がある。実証的には、貧困と経済的不平等がテロリズムの主な原因だとする説は否定されているというのである。
2001年の米同時多発テロを受けて、アラン・クルーガー・プリンストン大学教授(オバマ政権の財務次官補・大統領経済諮問委員長)がテロリストのデータを分析したところ、次のように、高学歴者が多く、貧困層出身者は少なかった。
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