いまや世界中の敵とされているイスラム国。アメリカは「正義の味方」として、先頭を切って攻撃を開始しています。しかし、イスラム国にとって一番のダメージは資金がなくなること。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者である北野幸伯さんは、イスラム国がトルコに石油を密輸して資金を得ていることを知りながら、アメリカが「無視」していることを指摘しています。
プーチン、トルコとISの石油密輸関係を叫ぶが…
今回は、トルコの戦闘機がロシア軍機を撃墜した件の続報です。
「つづきもの」になりますので、以下二本、まだの方は是非ご一読ください。
● 【プーチン激怒】★トルコがロシア軍機を撃墜した理由 11月25日
● ロシア軍機撃墜~プーチンは、「アメリカの関与」を疑う 11月28日
ロシア側は、「撃墜事件」について、以下のような見方をしています。
1. トルコは、「イスラム国」(IS)から、石油を密輸している
2. ロシア軍がIS石油インフラへの空爆を開始し、石油の密輸が困難になってきている
3. トルコは、「石油密輸ルート」を守るために、ロシア軍機を撃墜した
事件直後からこのことを語っているプーチン。
ISによる「同時多発テロ」の記憶が生々しいフランスで、ロシアの見解を繰り返しました。
露軍機撃墜は「ISとの石油取引守るため」 プーチン氏がトルコ非難 AFP=時事 12月1日(火)7時19分配信
【AFP=時事】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は11月30日、先週トルコが露軍機を撃墜したのは、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」からトルコへの石油供給ルートを守るためだったと述べ、トルコを非難した。
プーチン大統領は、フランス・パリ(Paris)近郊で開幕した国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第21回締約国会議(COP21)に出席する傍ら開いた記者会見で、「われわれの航空機を撃墜するという決断が、トルコ領内への石油供給ルートを保護したいという考えに基づいていたと考えるに足る、あらゆる理由がある。石油をタンカーに積み込む港に直結するルートだ」と言明した。
さらに同大統領は、「遺憾なことに、ISなどのテロ組織が支配する地域で生産されたこの石油が、産業規模でトルコに輸送されていることを確認する追加情報も得ている」と述べた。
トルコは、ISからの「石油密輸ルート」を守るためにロシア機を撃墜したと。
これがロシア側の見方です。
ところで、「トルコがISから石油を密輸している」のは事実なのでしょうか?
読売新聞11月27日には、こうあります。
シリア北東部とイラク北部の「イスラム国」支配地域には多くの油田があり、石油密売は「イスラム国」の主要な資金源となっている。
米財務省の推計では、石油密売の収入は毎月約4000万ドル(約50億円)。
イラクの旧フセイン政権が、経済制裁をかいくぐって石油を密売し、この地域にトルコとの国境を挟んで石油密売を行うシステムが確立したとされる。
さらに、「欧米の情報当局もこのことを知っている」という情報もあります。
欧米情報当局「イスラム国がトルコに石油密売」読売新聞 11月28日(土)10時22分配信
【パリ=石黒穣】イスラム過激派組織「イスラム国」から大量の石油がトルコに密輸されているとの見方は、欧米情報当局の間でも強い。
米軍特殊部隊は今年5月、シリア東部で「イスラム国」の石油事業責任者を殺害した。
英有力紙ガーディアンは、同部隊がその際押収した文書から、「トルコ当局者と『イスラム国』上層部の直接取引が明確になった」と伝えた。
なんと、「トルコ当局者」、つまり「トルコ政府」が直接密輸に関与していると。
これらの情報を見ると、「トンデモ系」とか「陰謀論」で片づけられないですね。