「日本の若者はだめだ」と言っている大人たちは周りにいませんか? その人たちの「本心」を、戦場ジャーナリストなど数々の経歴をお持ちの加藤健二郎さんが自身のメルマガ『異種会議:戦争からバグパイプ~ギャルまで』で暴露しています。
若者は大丈夫
就活が決まりかけている理系女子大生に聞いた。地方国立大学の工学部で画像関係の技術を専攻する理系女子さんは、就職希望先はゲーム関係の業界。工学部の研究室教授の接点から推薦されれば、キヤノンとか、そういうプリンタやコピー機メーカーに行きやすいのだが、希望は、ゲームソフトを作る会社。1つ目は落ちた、2つ目も落ちたら、プリンタメーカーかなぁ、と。
マスコミや世間は、若者が安定志向というが、そんなことはない。バブル期以降に就活していた世代が、自分のやりたい仕事よりは安定や待遇を重視していた「仕事やる気ない待遇重視世代」であるため、一括して大人たちが年下をそう見るが、今の就活若者はそうではないという一端が見えた。大手キヤノンより弱小ソフト会社なのだ。
その理系女子は「大人たちは勝手に若者はこうだ、と判断しますが、若者は若者で楽しくやっているのに大人たちは、気づかないだけですよ。自分たちの価値観で見るから、違う価値観で生きてる若者のこと不幸に見えるんじゃないですか?」と。
「時代の流れ的に、今の若者に同情するような意見をいうけど、私たちは自分の時代を不幸だなんと思ってはいないし、バブル期や高度成長期にはスマホなかったんでしょ。スマホのない時代なんかを羨ましいなんて思いませんよ」と。「どの世代の人も、自分の時代は良い時代で、他人の世代は不幸だって思いたいだけじゃないかと思いますよ。大人の中でも、だいたいが自分の時代を肯定してるんでしょ?」と。
すごい鋭い発言をする女子大生だなあと思い「その見方って、自分で考えついたの?」と訊くと、「いえ、研究室の教授が言ってて、自分でも、そう思いました」とのこと。国立大学の教授がこういう見方をできていたというのも、カトケンとしてはちょっと驚き。大学もなかなかいい教育してるじゃん。
画像工学などの専門的に話になってゆくと、理系女子はお得意の化学の話をしてくれた。カトケンは、物理系なので、化学にはかなり苦手意識がある。化学というのは文字記号で表すので、抽象表現と具体的現実をリンクさせる想像脳を求められるのだ。「水」=「H2O」を、物理の発想から導き出すのは難しすぎる。ベンゼン環は、夢の中で出てきて思いついた、という逸話もあるように、夢想できるのが化学の脳。
すると、女子「いえ、化学は、これはこう、という記憶なんですよ。物理のほうが、実際に目で見れる現象からの想像力が大事で。だから、物理を解く想像力のない人が、それでも理系でなにかやりたい場合に化学へ行くんですよ。だから、想像力やセンスでは物理が上で化学が下だと聞いてます」と。この見方も、研究室の教授から聞いたのだという。国立大学の教授、思った以上にいい教育してんじゃん、と、またまた、驚き。理系女子の明晰な回答よりも、大学教授がこういうことを学生に教えているんだ、というほうに感心。日本の将来は暗くはないよ。
もう1人、マレーシア人女性で、日本のゲーム会社に就職したいということで、日本の専門学校に通うために日本へ来ている人も参加してくれた雑談会でした。「日本の将来暗い、若者に将来がない」という発言は、大人たちが「俺たちの時代は最高だったけど、お前たちの時代はダメだぜ、へへへへ」って自己満足してるだけで、若者は大人なんかよりも、日々楽しく夢と希望に向かって生きている。大人たちの自己満足を裏付けてくれない若者たちの楽しい発言は、大人たちの仕切るメディア業界で採用されづらいから世に出てこないのかな。
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